悪趣味な黙祷






アサクサ。此処はベテルインド支部のシヴァーーもとい、ヴァスキが取り仕切っているエリアだ。ヴァスキはナホビノの手によって倒された。鍵を全て手に入れて、後は神殿の奥を進むだけだ。ナホビノーー卯月シズノは、妙にアサクサが深い穴の底のような場所みたいだなと思った。水がぱしゃり、と跳ねる。ジャックフロストが「オイラ、水浴び大好きだホー!」と楽しそうに水跳ねをしている。アサクサの町並みだった場所にはアプサラスやヤクシニーと言ったシヴァの配下が何かを待ち続けているのだが――少し気になったのは、ロアが死者を成仏する為のお香を作る為に、反魂香を欲していたところだ。

「(――何故、敢えてこの場所にしたんだ?だとしたら、この場所の死者の魂は何で成仏出来ないんだ?)」

そんな事を考えている矢先に、偵察をしていたウリエルが戻って来た。
ウリエルも元々は、メルキセデクの話によるとこの場所で「とある悪魔」に敗れ、マガツヒとなって彷徨っていた。襲い掛かって来たウリエル、ガブリエル、ラファエルを倒したのは紛れも無く自分だ。
――けど、何でこんな場所で三大天使は倒されたんだ?
それが少し、気になった処だ。考えられるのは、三大天使はある悪魔に敗れた事と、このアサクサで予想だにもしない悲劇が起こった事。
悪いものを好奇心で見る様な顔で、ウリエルに問い掛ける事にした。
「――ウリエル、聞きたい事があるんだけど」
「…何でしょうか?」
「――アサクサで、何が起きたの?」
ウリエルは黙り込む。余程言いたくない事なのか、それとも――まあ、仕方のない事だ。バアルの仕業で人格が書き換えられた上に同僚に迷惑をかけてしまったのだから。
「…そうですね、この場所は嘗て、ある存在が立て直して繁栄した街でした」

嘗てマネカタと言われる、マガツヒしか持たない存在は――悪魔にとっては都合のいい餌でした。特にマントラ軍と言われている魔界で強大な軍に強制的に使役されていましたからね。けれど、マントラ軍はある切っ掛けで壊滅状態になりました。隙をついたマネカタ達は命辛々逃げだし、同時期に何者かによって救出された彼等のリーダーと共に、アサクサへと逃げ堕ちました。
アサクサはマネカタの手によって復興しました。…当時の記憶は、まだ未だ、半分取り戻せていないのですが、壊滅したマントラ軍は我々が代理の指揮をしていました。――そのマントラ軍を本来取り仕切っていた者の名は未だに思い出せませ。かくして我々はアサクサに進攻し、マネカタ達を虐殺しました。…目的は、恐らくこの場所に残っていたマガツカでしょうね。未だ楯突くマネカタ達のリーダーを殺そうとした矢先に、その貴方が言っていたとある悪魔にやられて――…すみませんね、当時の記憶が未だに取り戻せていないのです。何故、我々がマントラ軍を指揮していたのか、何故――この場所のマガツカを狙ったのかを。

それなら合点が合う。この場所は、途轍もない悲劇が起きた場所なのだと。だから、ロアが帰魂の香を作ろうとしていたのかを――…だが、彼等の行いを非難する事がどうしても出来なかった。天使長の代理を務めているアブディエル率いる天使たちも、学園の生徒を次々と殺しているのだから…けれど、それは本当に秩序の為なのか、分からないまま。
「――ナホビノ、少し頼みがありますが…宜しいでしょうか?」
ウリエルは、話し終えた途端に自分に話しかけ――予想外の頼みをしてきた。

「――そのロアと言う悪魔の所に、私を連れて行ってくれませんか?」




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