胸に虫が住んでいる






「町外れの村に鬼が出たと言う情報が出たから、此処に来ましたけど――何も変哲の無い村ですよねえ、冨岡さん」
蝶の髪飾りを結んだ、薄い桃色の陣羽織の女性と、不愛想な表情が似合わない、それはそれは時が時だったら美丈部であろう男性の二人が、村へ行く道を歩いていました。――それぞれの腰に、刀が握られている事を除いては。

彼等は鬼殺隊。人を喰らう鬼を殺す、隊なのです。鬼と言っても、日中に活動するとそのまま太陽の光を浴びて灰となって死んでしまうので――夜中に活動するのです。平穏な夜を取り戻す為に活動し、砕けた骨も千切れた身体も、折れたプライドも、失われ行く命も戻らないと知って尚活動する、鬼狩りの者達。鬼達に人生を歪まされた者達が、何をそうして駆り立てるのか――それは、また別の話にしましょう。

二人が昼中に村へ辿り着いた時、その異様な姿を見た村人の一人が「おお、来て下さったのですか」とまるでこの世の地獄に仏を見るような表情をしながらも、歓迎をしました。
「それで、どんな鬼なのですか?」
「ええ、それはそれは恐ろしい鬼で、村中の娘達が消えて行くのです。そればかりか、街中で娘達が消えて行くと言う情報まで出てしまい、これは危ないと思って貴方達を頼ったのです」
「――ひとつ聞きますが、その鬼は、どんな鬼でしたか?」
彼女は顔を顰め乍ら、村人に尋ねました。その手の鬼に過剰に反応する理由は――彼女の過去にありました。其れを明かすのはまた別の話として、村人は「ええっと…」と答えようとしました。
「ただ、その鬼は――あいつじゃねえのかなって思ってる」
「あいつ?とは?」
彼女は首を傾げます。村人は思い当たる節があるのか――こう答えました。
「ええっと、それはだな――」

男は、女に餌をやり続けました。彼女は、血を好みます。自分が傷をつけた血で、彼女は其れを飲み干します。すると、彼女はすくすくと、健やかに元気になっていくのです。まるで、動物にエサをやる様に――否、虫に餌付けをするようでした。虫に健康を与えたら、蛹になると信仰する様に――男は女に血を与え続けます。

しかし、ある日を境に女は蛹になりました。男は一体、どうしたものか…と悩んでいました。蛹を叩いても、返答は在りません。ああ、早く彼女の素顔が見たい――だから、早くお前の声が聞きたい。と思うようになりました。
すると、蛹は羽化し、みるみると前よりも、美しい女性になりました。男はそれに見とれ、欲情し、哀れにも勃起し――彼の偏愛は、ますます狂っていくように、変質的な愛情を摂る様になりました。




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