空間汚染
さて、今日は何をしよう。と近くの山外れの小屋に住む木こり若者は、夜な夜な木材を採りに行きました。若者は、木こりにして、気難しい性格をしていました。大人しい性格をしている彼ですが、彼には一つの趣好と言うものがありまして、それはそれは村に住む人達から気味悪がられていました。
彼の趣味は生物の飼育でした。それも、動物を生きたまま解体したり、虫を生け捕りにしながら貼り付けにしたりと。村の人達は気味悪がって彼に近付こうとはしません。なんせ動物の贓物を切り抜く気持ち悪さと、彼の時折恍惚を浮かべる表情はまさに、狂人と言っても良いでしょう。
だから、村の人達は気味悪がりながら、彼の所に近付こうとはしませんでした。
その木材を採りに行った月夜の帰り道、若者は道に倒れている女性を見つけました。女性は全裸で、それはそれは美しい存在でした。目に赤い瞳を宿しており、美しい爪先をしておりました。若者は「あぁ、」と一目ぼれをし、美しい女性を抱えて小屋に連れて行くことにしました。
女性の身体を、お湯で濡らした手拭で拭いていると、女性は静かに、パチリと目を覚ましました。
「ああ、目を覚ましたか…どうしたんだ、あんなところで倒れているのは、何かあったのか?」
若者は女性にそう問い掛けると、女性は若者の目を見て、
「たすけて」と。
「そうかそうか、何かに追われていたんだな」と若者はそう言い、女性を手拭で体の前進を拭きました。
蝉の声が蒸し暑い夜でしたが、倒れた女性を助けた若者には、あまり気にならない出来事でした。
その一件が起こった後に、偶然にも、若い女性が行方不明になる事件が多発するようになりました。神隠しの再来だ。とか、祟りが起こっている。と言われるようになりましたが、人の目を避けている若者には興味を持ちませんでした。ずっと、この日々が続く事になりました。若者は、不思議にそう思っていました。
ある二人組の若い剣士が来るまでは。
(音も立てず、予感さえ許さず)