ただふたりを繋ぎとめるだけのまじない






王子様は、いつしか王様になってーー御付きの騎士が出来て、彼女を迎えに行くと決めていました。
けれど、彼女は亡くなってしまいました。王様は、深い悲しみに包まれました。
それだけではありません。大事な人である彼の騎士が消えてしまったのです。

彼は、悲しみと失ったものを富で埋める事しか出来ませんでした。
彼は、富と欲望の末に破滅してしまいました。

これはある哀れな、とある王様のお話です。


ーーそうして、ある時の夜、
人形の唄が、止まった。

地下墓で、人形が錆びていくように、朽ちていく。遅かれ早かれ、鼓動が止まる運命だったのだから。その掌に、彼の遺灰が詰まった袋が置かれていた。
『これを…』
(――何で、見ず知らずの自分に託す)
『彼女に…』
(…まるで、こうなる事を分かっていたかのような顔をして…どうして)
それが、彼の運命だと言うのだろうか。そうであるのならば…不条理だ。彼にだって、生きて良い権利があると言うのに。それすらも、エゴだと言うのだろうか。
人形の掌にある遺灰を見て、すこしぎゅっと掌を握り締める。

『ありがとう』
ふと、聞こえてくれる筈もないーー彼女の声が響いた。人形にも心がある…馬鹿馬鹿しいと言う人もいる。けれど、彼女は自分を見て、ゆっくりと微笑んだ。
『彼と最後まで、居させてくれて…これでゆっくりと休めるわ』
それが彼女の望みだと言うのだろうか?――顔を上げれば、彼女の身体は…徐々に朽ちていくだけだった。

それが彼にとっての罪と罰だとしたら、
私が彼に暮れた、愛情と罪と罰。
何て、罪深い人なのかしら。
ええ、それで良いのです。私達は永遠に、許されない存在なのだから。


「――それでも、私は誰かを救うような存在になりたい。貴方がそれを許さないのだとしたら、私は其れでも自分自身の道を行く、そんな存在であり続けたいから」

これは、決して潰える事のない、罪と罰と――愛物語。




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