喜劇で始まり悲劇に終わる






昔々、あるところに。■■■■と××××と言う二つの人形を操る国がありました。
二つの国は、互いを憎み合っていました。互いを憎みあった国を見て、誰しもが哀れだと思いました。
■■■■の王子様と、××××の王女様は――秘めた恋をしていました。互いを憎み合う国でも、恋は憎しみを超えると思っていました。
だから、■■■■の王子様は、王女様に言いました。
「いつか君を、迎えに来る」と。
――けれど、そんな途方もない約束は、叶う事がありませんでした。
叶えられなかったのですから。


「…あんた、生きて帰れたのか」
エビを茹でている男は、血飛沫が彼方此方染まっている自分の姿に絶句しつつ…驚きを隠せないまま、冗談交じりで言った怪談話を本当に解き明かしてしまったのに驚いているであろう――手に、ペンダントを持った姿を見て――何も、答えなかった。
「…何か、あったのか?」
「いいや――ただの、歌姫の、死体があった。それだけだ」
「…それだけか?」
「それだけだよ」
「…そうか」
男は何も言わず、自分は全てが終わったせいなのか…へなへなと、力が抜ける様な形で居座る。男は、そんな自分を見て「ほらよ」と茹でたエビを分けた。

「辛かっただろう」

自分の表情を見て、男は何かを察したようだ。茹でたエビを食べた。何故か――しょっぱい味がした。


彼の死体は丁重に燃やし、遺灰を袋に入れて――歌い続ける人形の傍に置いた。
それが彼の為だった。「傍に居てやれ」と言った自分と彼の約束を、尊重する為に。
あの地下墓には近付かなくなった。彼等の眠りを、妨げないようにする為だ。

街の中で母親らしき女性が、愚図らなくなった赤子を見て不思議そうな顔をした。
「あら…?この子、もう眠ってる。誰かが、子守歌でも眠ったのかしら…?でも、おかしいわね…。子守歌なんて、聞こえない筈なのに」

――ああ、彼女の唄がまだ響いているのだろうな。
其の事を思いつつ、自分は静かに彼女の傍を離れた。




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