そして亡霊に変わる






昔々、それはそれは美しい女王様が居ました。女王様は全てを愛していました。女王様は全てを慈しみました。だからこそ彼女は、夫にも愛され、子供達からも愛されました。
けれど、生まれてくる子供は異形と言える存在でした。大きな角、醜い鬼のような表情、老人のような腕…大いなる存在は、女王様から子供達を取り上げました。子供達は名も知らぬ地下に幽閉され、女王様は怒り嘆き悲しみ、狂いました。

ある異形の子は、見張りの目を盗んで――自由な広い大地に脱走を図りました。けれど、異形の子を受け入れてくれる存在なんて何処にもありません。
誰も居ない地下の墓場。子供はひとり泣いていました。どうして、こんな姿に生まれたの?どうして、誰も受け入れてくれないの?と。

その時、子供の脳裏に――優しい歌が響いていました。歌声の主は、名も知らぬ魔術師が作った、少女人形でした。
少女人形は忌むべき子供を、否定も拒絶せずに…受け入れてくれました。

それが――彼の心の拠り所でした。


「――そうか」
それが、彼の守りたいものなんだな。と自分は否定もせず、ただ彼の話を聞いていた。
「お前…俺の事を、蔑んだりしないのか」
「しないよ」
それは、自分も随分昔に受けた仕打ちだ…だから、彼の気持ちが少し、分かる。
「…けれど、あの人形を一目見て……分かったんだ。もう直ぐ、壊れるかもしれない」
彼は絶句をする。人形に関しては関わりが多い故に、何故か彼女達の気持ちが分かってしまう…それが、どうもあの人形は生まれつき欠陥品故に、地下墓に廃棄されていたのだろう。
故に――もう長くはない。遅かれ早かれ、鼓動が止まる。
「お前…俺の気持ちを知らずに…!」
「…貴方の気持ちは、少しわかるかもしれない。けれど…彼女はいつか、壊れる。永遠なんてある訳が無い」
自分も。彼も――大切な人と一緒に居る時間が、永遠である訳が無いのだ。それでも…彼が彼女と死ぬまで一緒に居る方が救いがあるのだろう。
「――けれども、貴方の気持ちを尊重する。此処でのことは、誰にも言わない…だから、彼女が死ぬまで傍に…居てやってくれないか」
ただの世迷言だと、切り捨てられるのかもしれない。けど、彼には一筋の幸せを掴んで欲しいのだ。

そう、それが出来たら――どれ程幸せなのだろうか。
けれど――現実は非情だった。

彼の腹を――歪んだ曲剣が貫いていた。




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