花は笑顔と見るでしょう?

お前の事が分からないんだ。


彼の治療を終えた後、居間でカウチに座り込み、用意されたコーヒーを飲んだ。カップに注がれたコーヒーは黒く、澄んでいる。まるで誰かの心を見透かしているようで、ファルマは少しそれを飲んだ後、居眠りを採った。


ふと意識が覚めると、何か重たい感触が膝にある。暖かな感触と、うめき声。ファルマは目を見開くと、自分に凭れ掛かって抱きしめ合うように蹲るターンの姿があった。いったいこれはどういう事なのだと、ターンに説明を求めたのだが、
「――何でもない、少し――――このままにしてくれないか―――――――」
何かをぼそぼそ呟いている事に気付いたファルマは、彼を抱き締めながらもカウチに横たわさせて、頭を撫でながら態勢を整え、カウチに座り直した。

「一体、どうしてあんな事を…?」
処刑人らしからぬあの行動を採った彼は、確かにあの時、普通の存在と変わりがない目だった。まるで、誰かに縋りたいと願うような、そんな目をしていた。
「―――お前も、そういう態度を取るんだな」
自分は決して弱みを見せないし、決して心を渡さない。けれど、それは相手も同じ事だった。自分とお前、まるで死の舞踏を踊っているような、そんな滑稽な話だ。お前の心を、見透かしたら、どんなに救われたいと願っているのだろう。自分は、確かにそれを思った。


目を覚ましたら、ファルマが居た。
ファルマは何処からか引っ張ってきたであろう本を読みながら、カウチに座っていた。
「起きたのか」
「…ああ、起きたようだが」
ファルマはそうか、と言いながら何も言わなかった。自分はさっきの行動をしまったと思いながら、問い掛けた。
「――さっきのは、忘れて欲しい」
残虐な行為が続いた末に、一種の嘔吐行為であるあれは、誰かに見られたくはなかった。それは、最悪な事にこの医者に知られてしまった。誰かに言いふらしたら、どんなに最悪な恥を晒されるのだろうか。だが、この医者は。
「…忘れて欲しいのか?」
自分を押し倒すような形で、ベルトを外そうとしている。ガチャガチャと金属がかき鳴らす音をしながら、外す行為に没頭していた。
「それならこの行為、忘れて欲しい。等値交換、それがお前の考えだろう?」
もう、どうにもなれ――そう言わんばかりの突発拍子も無い行動だった。

「っ…」
「…ドクター、焦らなくていい」
ぐじゅぐじゅと舌が水音を鳴らしながら、雄を舐め回す。幹に指を這わし、時折袋に手を寄せる。舐め回すように舌をならしながら、自分は荒い息をしながらもファルマの頭を撫でる。毛を指で這わせ、ぬぽっ、ぬぽっと口を動かす。

忘れて欲しい。この自慰を思わせる、弱みを見せる行為に、何の意味があるのだろうか。

ファルマの息が荒くなり、腕を動かすのが早くなった。急に高らかに上り上げる快楽を押し上げて――勃ち上がった雄からファルマの口を外し―――ペニスから白濁した精液を顔にぶちまけた。
「あっ…」
汚れた顔を見上げると、はしたない顔をしている。それがそそる様な形であれど、興奮したペニスから残りの精液を彼女の口にぶちまけた後、ことの行為は終わった。


「―――あれは、何の意味があったのだろうか」
ファルマが帰った後、自分はそう思いながらもシャワーを浴びながら考えた。ファルマには師が居た。けれど、その師に恋い焦がれるような感情を持っていた。叶わぬ思いの自慰行為なのだろうか。可哀そうに、自分を代役に自慰に耽っている。

それは、まるで――自分もそうなのだろう?と思わせるように。




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