焦がれた優しさという復讐

優しい理論なんて要らない。
見せかけない愛なんて要らない。

ただ、その手のぬくもりだけがあれば良かったのに。


また、静寂。他者の死体からコグを抜き取る。ファーストエイドやアンブロンが居ないこの地下室は、静寂だけが残る。机にある資料を抜き取り、安楽死についての情報を調べる。はーっと息をつき、机に伏せる。
(―――この地は、寒い)
メッサティーンは寒い。極寒の惑星故か、猛吹雪が吹き荒れている。この惑星は嘗てオートボットとディセプティコンの戦場だったと聞く。かなり酷い状況だった。沢山の死人が出た。多くの悲しみが生まれた。そうして出来たのが、この医療施設だと聞く。
デルファイのCMOになってから、どれ程の年月が経ったのだろうか。この地はDJDの拠点の一つだと聞いた。つまり歴代のCMOである彼等は、DJDと取引を行っていたのだと言う。逆らえば、死――悪魔の契約と言っても過言ではないこの地獄を、彼らはどんな状況で、必死に生き残りたいと考えたのだろう。
けれども、一つ――知りたい事がある。
「彼も、どんな心境で同胞を殺しているのだろうか…」
未だ、何処かの地で同じディセプティコンを殺して回っているのだろうか。同じ同胞であり、共に戦った仲間。彼も、どんな心境で戦っているのか、どんな考えがあって仲間を殺しているのだろうか。
もし、彼の本心を聞けるならば――どんな形で、答えればよいのだろうか。それが、残酷な形であっても、彼の本心が聞けるならば自分が少しでも、救われるのだろうと思っているのだろうか。彼は、自分を優しいと言った。自分は優しい理論者ではないと返した。けれど、彼はこう返した。

「貴方は確かに、冷たい心を持っている。けれど、貴方は優しい」

彼は確かに、冷たい声ではなく――何かが籠った声で、そう言った。あれはどう言う心算なのだろう。彼の本心が、少しでも気になる。それが最悪の結末を迎えようとも、知りたい。けれども、机に伏せていると眠気が襲ってきた。そう言えば最近、激務で睡眠すら取れなかったのだ。襲ってくる眠気に耐えられず、ファルマは深い眠りについた。

何処かで、子守歌が聞こえる。
それは、辛い思いにしている自分にとって―――――。




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