すべてを奪えたら

「寄せ集めの絆に、意味なんて無かった」


誰かがすすり泣く声がした。血の臭いがした。吐き気がするほどに辛い音がする。自分自身を切り捨ててまで、信頼した男の命を自らの手で奪った。

『お前を例えるなら、まるでピーターパンだな』と彼女はそう答えた。『何故そう思う?』と私は彼女に答える。お前はまるで猫のようにひょいひょいと相手に引っかき傷を負わせるけど、心は細い。まるでひとりぼっちの子供の様だ。と貴方は私をそう評価し、微笑む。きっと、この日々は永遠に続く筈が無いだろう。いつか自分が、貴方の手を下すまでは。そう思うと、吐きそうな気分になった。けれど、彼女は自分の掌を見て、静かにほほ笑んだ。

これは自分が選んだ道だ。寄せ集めた絆を、自分の手で壊してしまった。それで良いのだろうか。正義を貫き、大義を果たす。その選択で、何が出来るのだろうか。この事をしても、きっと明日なんて来る筈がない。何時か、自分も彼等も、死ぬだろう。彼の血を拭いながら、思った。

『けれど貴方は、一輪の薔薇の様だ』『どうしてだ?』『棘で回りの外敵から身を守っているが、貴方はとても寂しがり屋だ。私に対しても、弱みを見せない。けれど、無防備に構えているだけだ』『そうか…けれど、そうだな』『ふふ、どう致しまして』『けれど、ターン―――覚えてくれないか』

覚えてくれないのは、誰だったのだろうか。青い花が咲き乱れる地で、誰かの叫びと、泣き声が聞こえる。結局、寄せ集めの絆だ。紛い物の絆だ。何も、出来ないこの世界が、怖いのだ。

『お前のやっている事は、間違っていないんだ。けれど、それは私の犠牲で成り立っているのかもしれない。私はお前を恨むかもしれない。馬鹿な自分だと思うだろう?でも、お前は―――』

「お前は何も――成し遂げてはいない」
成し遂げていない、けれど、自らが望んだ結末だと、何処かで感じ取っていた。なのに、自分は無駄死にだ。家族も、何もかも、成し遂げられる事は出来なかった。


『もし、間違っている――と思っていたら、…少しでも私の事を、覚えてくれないか。そうしたら、幸せになれるのかもしれないだろうな』

そうして、私の世界は緩やかに、壊れて行った。




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