崩れていく自制心

「種を撒く、それがお前の言う師の教えだったんだろう」

デスザラスはそう言い、本を読み耽りながらターンにそう告げた。種を撒く。かつて、師が教えた言葉だった。星に種を撒く。そうすれば、滅びかけた星に命が芽吹く花が宿り、世界がとても素晴らしくなる。けれど、そんな細やかな願いは遠い昔の話に思えてきた。平和なんて結局叶わないものだった。
「俺と貴様、メガトロンを殺し、ディセプティコンの正義を掲げる。信念を貫く。それが貴様のやると決めたら止めないルールだ。けれども、貴様の瞳に迷いがまだ見える。正義の為なら全部を捨てるかと言う覚悟を」
デスザラスの指摘に、図星を受けたターンであったが―――思わず、言い返した。
「何が言いたい」
「――メガトロンを殺し、ディセプティコンの正義を掲げる。それで、世界が平和になると思えるか?繰り返し、行われてきた戦争、生まれてきた命と、使われる命。そして、散らされる命――こんな不毛な戦争と、いびつな平和。何度それを繰り返してきた?」
それは何度戦場に出た俺が一番知っている筈だ。とデスザラスはそう言い、本――恐らく平和論と思われる書物を本棚に入れた。
「なあ、ターン。平和の為に、幾つかの同胞の命を捨ててきた?オートボットである彼等でさえ利用し、結果的になんのためになる?それをメガトロンの死で終幕を飾るのはあまりにも酷すぎ―――」ガンッ!と拳が壁にめり込む音がした。
デスザラスが見上げると、ターンの拳が彼の頬を掠り、壁にめり込んだ。図星か、それとも――焦っているのか。
「らしくないぞ、ターン。…貴様は、何を求める。何を考える。その姿を、ケイオンやニッケルに見られたくないだろう?」
デスザラスは大人しく言葉を返し、ターンは「すまない」と拳を戻した。
「何か、引っかかる事でもあったのか?」

『何か、引っかかる事でもあったのか?』
言えないのだ。ファルマが消えた後、体調が思わしくない。恐らくあの一件の後、メガトロンがオートボットに入った事と――ウォワルドでの激務が重なったのだろう。ターンはベッドに入った後、また悪夢を見た。

「地獄に落ちろ」

ファルマはそう言い、頭部の無い姿で地を這うような声で言ってくるのだ。寄せ集めの家族を持つファルマの全てを、叩き壊してしまったから?
起きた後、滑り込むように手洗いで嘔吐した。気持ち悪さが勝っていた。
(――こんな姿、情けない…)
いくら処刑部隊隊長である自分でも、こんな惨めな姿は最悪にも近い。けれども、この気持ち悪さを我慢しながら、ターンは再び、静かに眠りに落ちた。




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