モノクロオピニオン

誰でもいいから、この思いをぶつけたかった。けれど、ぶつけられなかった。あいつが常に自分を監視している事を。例えぶつけ、一致団結してこのデルファイを守ろうとしても?守れはしない。医療用と患者達と、処刑と戦闘用に特化しているDJD――叶う筈が無い。もう、つらいのだ。誰か、助けて。と叫びたかった。

「…ファルマ先生、顔色悪いけど大丈夫か?」
アンブロンはそう言いながら、何時の間にか顔色を悪くしていた自分に気遣っていた。だが、アンブロンを見ると――どうしても心の中からどす黒い感情と、複雑な心が渦巻いてしまうのだ。彼は元々ディセプティコンの脱走兵――恐らく、DJDで最重要ターゲットにされているであろう。今は、デルファイの看護師兼病棟名簿の管理をしている。自分はため息をつきながらも、カルテを机に置く。
「そう言えば、ラチェット先生は今元気にしているってさ。呑気なものだなぁ…伝説のナイツオブセイバートロンを探しに、ロストライト号で旅をしているってさ。俺も行きたかったなぁ」
「減らず口は叩くな。仕事をするぞ」
すると執務室からファーストエイドが現れ、アンブロンの名前を呼んだ。
「アンブロン先生ー、メディカルポッドが壊れちゃいました」「えっ本当か?いつも壊れちゃうよなあ、あのポッド」「しょうがないでしょ。まだ最新のポッドなんだから…ファルマ先生、少しいいですか?」「ああ、ポッドのメンテナンスだな?分かった」
何時もと何も変わらないデルファイの日常、それでも、確かに自分の居場所が此処にあった。けれど、いつかはこの日常も終わってしまうのだろうと悲しくなった。

「…そう言えばさ、ファルマ先生は、どうして医者になろうと思ったんだ?」
「……ラチェットみたいになろうと、か?」
「へぇー…俺、正直ファルマ先生の事をおっかない医者だと思っていたけど、意外だったんだ」「意外?」
俺、元ディセプティコンで…合体兵士の落ちこぼれだからさ。エリートのアンタが正直羨ましかったんだ。だから、俺はアンタの事を羨ましいって思ってる。
「別に私は、エリートでは…」
「良いじゃないか。どうせ俺なんか――」「アンブロン」「えっ」
自分の言葉に、アンブロンは息を詰まらせる。
「お前は…お前のままでいろ」

どうしても、精神的に狂っていく。それでも、何時かはこの日常も、終わってしまうとなると、悲しく感じた。誰も知らない、秘密の地下室で――自分はこの日常をいとおしく感じた。
(――ああ、それでも)
――まだ、この日常の中に居たい。それは、許されないだろうけれども。


Call my name
(彼には、翼が無かった)

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