クラシックメモリー・マルチユニバース

「全く、お前さんはいつも無茶をしている!」
ラチェットは警備員のアイアンハイドに対して、怒っていた。またアイアコンで暴動が起きたらしく、アイアンハイドはその暴動を無理を通してまでグループ犯を制圧し、暴動を鎮圧させたのだが、その際に怪我をしたらしく、ラチェットのリペアを受ける事になった。此度も昨日も一昨日も、アイアンハイドは事件があったらすぐに無茶をして制圧して鎮圧を行う。全くリペアをする自分や弟子にも配慮と言う物がないのか、とラチェットが溜息をつく。オートボットの中で最も治療技術が優れており、かの議会ですら目をつけるほどの実力を持っている自分にも、限界と言うものをこの馬鹿に教えてやりたい気分だ。まだ若いファルマは「ラチェット先生…」とおどおどしていたが、アイアンハイドはラチェットに反論した。
「アイアコンで暴動が起きたら、あのまま死傷者が増え続けていた。そうなる前に止めに入って犠牲者を止めるしか方法は無かったんだ」
「お前さんはいつも無茶をして!血盛んなのは分かるが、仲間と協力して止めに入るのも頭に入れろと言ってる筈だ!」
いつの間にか、何時ものいざこざが始まった。ラチェットは「全く…これで最後だぞ。今度怪我をしたら、他の所に行って貰うからな」と愚痴を吐いた。
「なあ、お前の弟子、ずっとお前の傍から離れないんだな。名前は…ファルマだったか?」
「そうだ、ファルマと言うんだ。いずれ私の跡を継ぐかもしれない」
「跡を継ぐかもしれない?それってどういう事だ?」「彼は自慢の弟子だよ」
ラチェットはそう答えた。自慢の弟子。彼曰く、成績も優秀で、手先が器用な弟子と言う事だ。彼には自分の才能を継ぐ可能性がある。とラチェットはアイアンハイドにそう説明していた。
「は、ははは…まさか、物騒なお前の後継者だなんて、夢にでも――」「今すぐその発声回路をちょん切ってやろうか」「アッスイマセン」「わかればよし」
しかし、手先が器用――か、何時か成長したラチェットの跡を継いだファルマを、見てみたいな。とアイアンハイドは、当時そう思っていた。だが、彼が、それを叶う筈が無かったのだ。

「自慢の弟子、か」とドリフトはラチェットの話を聞き、黙り込んだ。自分にも敬愛する師が居た。ウィングと、ダイアトラス――だが、それは今は昔の話だ。
「まだ俺がデッドエンドでガスケットと……一緒にいた頃の話だろう」
思い出したくもないだろうか。ドリフトは一瞬口籠った。だが、ラチェットは頷いた。
「多分、ファルマは俺を嫌っているのだろうか。と思うとやるせない気持ちがするよな。あの悪名高きDJDにプライドや人生もズタズタにされたから――いや、前からだったか?」
あの時、ファルマを躊躇いなく斬ったのは、ラチェットの命を脅かす輩は、例え誰であろうと決して許しはしなかったのだ。それは過去の鎖に縛られた故か、それとも――。
「それに…ファーストエイドも、とても辛かったんだろうな。俺が戻ってきた時、涙を堪えていたんだからな…相当、悲しい思いをしたんだろう。トレイルカッター、プロテクトボットの仲間達…そして、アンブロンと、ファルマ」
「…ファーストエイドに、お前さんのような悲しみを背負わせてはいけない。それは、私がきっと何とかしてみせるさ、だが――あの時、ファルマに…なんて言葉をかければよかったのか、私にも分からなかった」

あの哀れなディセプティコンの"正義"に踊らされた男に、利用されたファルマを――どう救えばよかったのか。それは自分が――ファルマをもっと理解していれば、何かが変わったのだろうか。

「…だが、過去は変えられない…前を進めばいい。そうだろ?」
「…ああ、お前さんの言う通りだ」


(古の思い出は、蜻蛉と共に眠らん)

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