ティファレトの聖鎖

「神様を信じるか否か?」
ファルマはラチェットの突然の問いかけに、忽然としていた。「ああ、そうだ。どっかの馬鹿が作り出した神が居るか否かの論だ」と溜息をつきながらデータパッドを置き、カルテを出した。
「自分の手は神の手だ、アダプタス神に認められている。とどっかの馬鹿がそう言っているが、私は神が居るとは思わんがね。まあ、そんな事実があるのならば本物の神様を寄越して証明して来い…と思わんがね」
ラチェットはどっかの馬鹿――ファルマはラチェットのそう言う所に惹かれたのだ。自分にも厳しく、他人にも厳しいが――消え行く命を決して失わせる訳にはいかない鋼の精神と、誰かを救う為の医療だからだ。と言う理念。
「ファルマはどう思うか?」
「私は―――――ええっと…答えが難しいですが、居ると思いますね」
居ると?とラチェットが困惑した表情をしていると、ファルマは微笑んで問いを返した。
「神様は――ラチェットだと思います」
ラチェット自身。ファルマの答えに、ラチェットは一本返されたな…とぽつりと呟いた。
「私も、貴方と同じ神様が居るとは思えないんです。ですが、私は――ラチェットが神様だと思うんです。私の進むべき道を照らしてくれるのが、貴方自身だから」
「ファルマ…」
ファルマは立ち上がり、ラチェットから出されたカルテを持って立ち上がる。
「アダプタス神から認められた手――何時か、私も手にしたいと思っていますね」


『アダプタス神から認められた』――だが、まさか彼が、こんな事になるなんて思わなかっただろう。神は確かに居た。だが、まさかこんな形で会うなんて思わなかった。アダプタス、いや、ファルマは――確かに、微笑んで…そして、最後の言葉を言った。

「My beloved.ratchet」

ああ、その声は――届く事は、決して無かった。


(××××××××)

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