そして、ルクレティアは語り継がれる

嘗てあの戦いを生き抜いた同僚が、親友の弟子に手をかけたと言うのは到底信じられない真実だった。メガトロンがターンらDJDを倒し、突然機能主義の世界に飛ばされ、信じられない真実をこの男が鵜呑みにするのは時間がかかるだろう。だが、自分も、この男――ローラーも、目の前の真実を目にしてしまったからこそ、複雑な思いを暴露する資格は持っているのだから…。
「――色々あってすまなかったな」
オプティマスに無断で黙って特攻し、それ以降行方が分からなかったローラーが、ラチェットと久々話をする際に、いきなりラチェットに詫びた。ラチェットも、親友と再会し、何を言えばいいのか――分からなかった。デルファイ事件の事、トレイルブレイカーとスキッズの事、ファーストエイドとアンブロンの事、ドリフトの事、――そして、ファルマの事。ローラーは「ゆっくり深呼吸して落ち着け」と体が小刻みに震えているラチェットを落ち着かせ、ラチェットは椅子に座り、彼にこれまでの事をぼつぼつ話した。


「………そうか」
ターンの正体はアウトライヤーであり、スキッズの同僚の一人であるグリッヂだった。グリッヂが、ファルマに手をかけた。いや、ファルマを精神的に追い詰めた事実は到底受け入れ難い真実だった(後にクロームドームもショックウェーブ議員の教え子が同じ同僚だったのに、そんな事をするなんて信じられないと言っていたが)。実質的にトレイルカッターも、アンブロンも、スキッズも――彼によって殺されたも同然だ。あんな受け入
れ難い真実は、二人を重い空気に押し潰した。

「…もし、ファルマを引き留めていれば、こんな事にはならなかったのだろうな」

あの時、デルファイに送られる事を聞いたラチェットが、ファルマと話をしていた時に、ショックウェーブやローラーの事を考えていた。オライオン達を守る為に評議会に投降したショックウェーブ、生死不明の状態になったローラー…だが、結果的にファルマと永遠の別れを意味をしていたのだから、あの時を思うと考えたくなかったのだろう。
「お前のせいじゃない」とローラーはラチェットにそう、言葉を返し――「もう、終わった事なんだ」と、言葉を返した。
「ただ、グリッヂの事を考えたら…ファルマと、自分…何処か同じ所を重ねていたんだろう。だが、あいつがそんな事をする筈が無い。と必死で受け入れられずにいた。どうしてこんな事になってしまったんだろうな――戦争が無かったら、グリッヂもあんな事には成らなかった。ファルマもお前の跡を継いでいた。けど、」
現実と言うのは、中々上手くいかないもんだな。と――スワーブバーで、トレイルカッターがメガトロンに言った言葉を思い出した。

『罪を償う為にロストライト号のロディマス船長と一緒に居るけど、周りが白けた目で見ている?ま、そんなもんだろ』

『――現実って言うのはなぁ、中々上手くいかねーもんだよ』


そう言えばラチェットは、ファーストエイドとアンブロンと、一緒に撮った写真の他に、オライオンから譲り受けた写真を貰っていた事も思い出していた。

スキッズやグリッヂ、チャージャーやトレイルブレイカーが写っていた写真。そして、今は居ないショックウェーブの姿もあった。だが、絆は失われたが――それでも、自分とローラーは、此処に居る。まだ、過去は失われていなかった。けれども、ファルマの未来は?ラチェットは、天井を見上げた。


(ひとかけらの、夢)

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