神様のいない場所
あいつの顔を見る。高慢な性格のリゲルの王子であるベルクトから見た黒騎士さんについての物語と言うのを誰かはそう言う。俺は彼ではなく、リゲルにいた頃を思い返す。叔父上と話していた時に、今と違う笑い方をしていた。何となくだが、あの時は陰りがない顔をしていた――あのティータという女性と幸せそうに、睦まじく過ごしていた。だが、今の姿は――リゲルの騎士ではなく、グルニアの黒騎士団を率いる騎士の姿だ。何処か、陰りが見えたような気がした。
「貴様からしたら、どうなんだ」「だが、彼が優れた騎士であるのは間違いないだろう」
ノディオンの騎士であるエルトシャンから見たら、自分から見たら優れた騎士である事を直ぐに見抜いた。若くして死んだ者であるが、シグルドの戦友である彼の下す判断は、流石はクロスナイツ騎士団長でありながら、ミストルティンを持つ(どうでもいいが、息子も優れた騎士であるが俺と似た性格をしている)騎士である判断であろう。
「優れた騎士でも、弱点を取られると直ぐに脆くなる」「例えば?」
エルトシャンは口ごもった。きっとあのノディオンの王女や妻の事を言いたいのだろう。自分はそう易々と言及する事は無かった。自分もリネアの事を思い返していたからだ。

「父上は、そう仰っていたのか」
「そうだ」
アレスは自分の問いかけに答え「そうか…」と悩める、思春期の少年らしさをまだ残している表情をしていた。すると会話している自分達の後ろでプリシラが絵本を持って何処かに行こうとしていた。
「おい、いったい何をしに行くつもりだ?」
「あれ、ベルクトさんに…アレスさん?珍しいですね。二人で何をしていたのですか?」
「ちょっとな…貴様こそ、何をするつもりだ?」
「ノノやミルラが絵本を読みたいって言うから、書斎から絵本を取り出してきたんです。この絵本が一番好きそうかなー…と考えてしまったんです。じゃあ、私は先を急いでますから」
それでは、失礼します。と言い、彼女は先に行ってしまった。

(分からない事だらけだ、結局は――自分は皇帝にはなれないと、何処かで感じてしまったのか。だが、あいつは…王になる器になんて持っていなかった。そう言えば、カミュも何時だったか、ある事を自虐していたな)

『私は騎士の器を持っているとは思えないのですが――王には、猶更向いていなかったのかもしれません』

(…似たもの同士、って事か)

急に用事があると言い、ベルクトが立ち去った後一人取り残されたアレスも自室に帰ろうとした瞬間、後ろから肩をポンポンと叩かれた。後ろを振り返ると――不機嫌な表情をした、従妹のナンナが居た。
嗚呼、これはまた説教のパターンか。と理解したのだが…ナンナは、意外な言葉を口にした。
「ちょっと、話があるの」



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