眼窩を埋めつくす光源
戦場を駆ける漆黒の駿馬、まるで父上の様だと最初は、そんな感想を自分の心に抱いていた。

「…おい、貴様」
プリシラはゲストルームで暗夜王国のあのドジなメイドのフェリシアが淹れた紅茶を飲んでいる最中に、ある人物と出会った。プリシラは唇をハンカチで上手に拭き取り、後ろの方を振り返る。やはり、最近召喚されたばかりの――師子王エルトシャンの息子であり、セリスやリーフと共にユグドラルの解放戦争を戦った仲でもある…。
――黒騎士アレス。父親譲りの剣裁きをし、戦場にその名を轟かせている聖騎士だった。
「はい、何でしょうか」
自分がそう答えると、アレスは「丁度良かった、貴様に話がある」とソファに腰掛けた。ベルクトといい、ミシェイルといい、兄と同じ融通が利かない人達と何気に縁があるのだろうか。とそう思っていると、アレスは意外なことを口にする。
「…最近、カミュについて気にしているのだな」
「えっ」プリシラはティーカップを落としそうになったのだが、アレスは「いや、忘れてくれ」とそっけなく答えた。これでは話になっていないのでは。思い切って、プリシラが思い当たる部分を考え、アレスに対してある事実を口にする。
「…貴方のお父様を、思い出しちゃったの?」
無言。どうやら図星のようだ。だが、アレスは「ああ、そうだ」と答えを口にする。プリシラは「やっぱり、そうなんですね」とふふっと笑う。早速だから、彼もお茶に誘ってしまおう。と、隣に居たジョーカーに、紅茶を頼んだ。

「エルトシャン殿下と、カミュ将軍は無茶をし過ぎなんだと思います」
毎回、シグルドとミシェイルが彼等を抱えて私やセーラさんの所に駆けつけて杖の治療を受けてしまうんです。と口にする。
「父上が、シグルド…様と本当に親友だったのか」やはり彼は敵討ちのシグルドに対して敬語をつけるかどうか、まだ迷っているみたいだった。
「で、カミュがミシェイルに抱えられているのは…どんな関係なんだ?歴史書だと、ドルーア側に就いたマケドニアとグルニアの総帥だったと聞いているが」
「…どんな関係、ですか」
確か、その時カミュの事を話していたミシェイルは、友人と言うか、親友とは言い難い…所謂、共犯者?の様な態度をしていた。
「ええっと…一緒に戦った、戦友?」
上手く誤魔化しておく事にした。彼等に首を突っ込むと、余計事態が悪化してしまう。
「そうか」とアレスは納得した表情をした。
「正直、思う。俺はずっと復讐の事を考えていたが…実は、父上の背中を追っていただけだろうな。と今は思ってる」
プリシラは、何も口にしない。アレスの話を、ただ聞いているだけだ。

「…父上は、立派な騎士だったと、母上から聞かされていた。高潔で、誇り高く、優しい騎士だったと聞いていた。俺はそんな父上に憧れていた」

だが、父上が死んだ時は――全てが変わった。とアレスは何処か暗い表情で語る。
「…そうですか、誇り高い黒騎士さんでも、弱音を吐く事はあるんですね」とプリシラは、ちょっと皮肉を込めた言葉を吐き出した。
「騎士である彼等は、誰かを守る為に戦っているんです。貴方のお父様やシグルド殿下、セリス様に、エリウッド公…それに、カミュ将軍や、ミネルバ王女も、前線で戦っている。人はいつか死にます…ですが、その何かを、また次の誰かが受け継いでいるのでしょう」
アレスは「そうか」と口にすると、ソファを棚代わりにして置いているミストルティンを構える。
「…この剣は、父上が俺を見守っている証だったんだな」
プリシラは、そんな彼を見て――ゆっくりと微笑んだ。

「私も貴方も、似たような悩みを抱えているんですね。だったら、一緒にお話ししましょうか」



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