眩暈を起こして死んだ獣
たまに愚痴りたい時もある。とかつて、この世界には居ない部下のロベルトが言っていた。王だって、王子だって――たまに不満を漏らしたい時もある。

アスク城にある酒場で、レンスターの王子はミルクを飲んでいた。
「不思議な感覚だな」
目の前に居るレンスターの王子はそう言い、椅子に座りながら此方を見ていた。
「この世界に来てから、驚きの連続だと思った。セリスの父上と母上が一緒に居て、アレスの父上と…伯母上もこの世界に居る。最初は夢だと思っていたけど、頬をつねっても、夢じゃない――本当の世界なんだなって」
「リーフ王子は、どう思いますか?」
「でも…この世界に来ていない父上と母上が来たら――僕は、どんな気持ちでいけばいいんだろうって。それが不安なんだ。フィンやナンナも、僕に気を遣ってくれているけど、僕は王の器に立つのが相応しいのかどうか、悩んでいるんだ」
リーフは王の立場であるが、王の立場に相応しいかどうかは――自分自身でも分からないのだ。幼い頃に国を追われ、若き騎士と、異国の王女と共に各地を帝国軍から逃げるように転々として来た日々。とある村でエーヴェルと言う女性に救われ、村の人達と、家族のように過ごしてきた日々。その平穏な日常が、ずっと続けばいい。その平穏が――帝国軍の襲来と共に終わった時。
自分にも見覚えがある筈だ。幼い双子の王子と王女も、立場が災いし、暗い、孤独のような日々を送ってきた。王族の頂点に立つのも、王族に生まれるのも、碌な事が起きない。それがリーフ自身が理解している事であり――黒騎士カミュの悲しみでもあった。

「貴方は貴方の道を進めばいい」

だから、自分なりの言葉を贈る事が、精一杯の類でもあった。
「王族であっても、貴方は貴方の道を進めばいいのです。誰の言葉に惑わされなくたっていい、自分の、信じる道を突き進めばいい」
それが――自分自身の答えでもあり、嘗て――自分自身が下したつらい決断でもあった。だが、目の前の王子は、
「…何だか、あなたの言葉に、救われた気がするよ…有難う、カミュ将軍」


――救われた、か。
自分は、誰かの助けになれたのだろうか。酒場からの帰路についている最中、自分自身はその言葉に悩んでいた。
『…それでも、人は何処へ行くのでしょうか』
トルバドールの女性のプリシラから言われたその言葉は――確かに、彼の胸に響いた。人は、死んだら何処へ行く。
「…カミュ将軍、聞こえていますか?」
リーフの護衛騎士であるフィンから、ハッと我に返った自分は彼の方を見た。
「先程、リーフ様と何かお話しされていましたが…どうしましたか?」
「あ、ああ…少し、彼の悩みについて相談したりしていた」
「…そうですか、有難う御座います」
フィンからいきなり感謝され、こちらも理解がイマイチ分からなかった。何故、感謝されてしまうのだろうか。
「…私でも時、リーフ様のお力に、なれない時があるのですよ。自分自身では耐えきれない、立場故や、ナンナ様の事――そして、キュアン様とエスリン様の悩みを抱えているのですから…ですが、こちらに来てから打ち明けられる人が居て、嬉しかったと思うのですよ。だからこそ――」
「いえ、いい…此方こそ、感謝する」
自分自身でもどうすることも出来ない悩みは――リーフやフィンだけが抱えているのではない、エレブ大陸の杖使いのプリシラも心配していたと言うのなら、自分は結局。一人で悩みを抱えているのだな。と苦笑しながら。


アスク城に酒場というかバーはあるのってのは、T/FM/T/M/T/Eで拠点の船で酒場が経営されていたり、某ソロモン系ソシャゲでもアジトにバーがあるから、アスク城にも酒場が置いてあっても不思議ではないよねって



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