王冠をつむいだのはだれ

「で、こいつがニノの未来の息子か?」
このしかめっ面はジャファル譲りだな…と言っているがたいのいい剣士はレイの母親であるニノの兄(正確に言うと義理の。であるが)のロイドは、ぶつくさ言っていた。正直こういう対面は現実で言うとあり得ないのであるが、この世界ならば何でも許されるのだ。ロイドは「ライナスは未だこの世界には来てないしな…ウルスラは話しかけてもソーニャの事を考えてるから無駄だろうがな…」とそう言っていた…のだが。
「…しかし、ニノがお前を生んで、幸せそうだったのなら俺は満足だろうな」
(良い訳があるか)
母も、父もルゥと自分を孤児院に預かって…そのまま死んでしまった。幸せなんてあり得ない。ニノは自分を生んで幸せだっただろうか。ジャファルは…自分をどう思っているんだろうか。未だに分からない。
「…其処で何をしているんだ?」
控室で自分とロイドが他愛もない会話をしている時に、『大将のお友達(シャニー曰く)』であるカミュが此処に入って来た。正直、こいつと話しているとパーシバルと話しているような気分に陥るので気が気ではない。
「お前がセーラの言っていた女垂らしの騎士か」
「…その不名誉なあだ名は何処から来たのは分からないが、褒め言葉として受け取っておこう」
「…そう言えば、お前の実力を一度拝見してみたかったんだ。あの戦いの時にあの赤毛の竜騎士と共に敵を蹴散らす姿は凄かったぞ」
カミュは「そうか」と言い、「では…手合わせでもしてみるか?」とロイドに言った。「…俺の実力、白狼と言われる程に甘くはないぞ。こちらも、黒騎士と言われるほどの実力を見せてみろ」

(正直、凄いと感じた)
ロイドの圧倒的な剣技と剣捌き。カミュの軍馬を巧みに乗りこなし、神器グラディウスを使いこなして其れと互角に渡り合えるほどの実力。
「…なあ、あいつ…ロイド…この場合何て言えば分からないけど…彼に対して鬼神の如く実力を発揮しているよな。文献ではその実力と指揮官の高さを発揮し、ドルーア帝国に与してマルス様率いるアリティア軍を苦しめたらしいけど…何か、ロイドと戦っている間、比類もなくその力を発揮していると、言うか…何と言うか…」
レイが闘技場でロイドとカミュの戦いを見ていると、変な感じが生まれた。何だろう、カミュがロイドに固執している訳ではなくて、何らかの因縁を感じる気もしれなくないが。するとレイが呆然と見ている間に、それらの光景を見ていたジョルジュが「少し失礼する」と言って、レイの隣に座った。
「…狼と深い因縁があるからな、あの男は」
「えっ?」レイはジョルジュの発言に後ろを振り返ると、ジョルジュは腕を組んでその光景を見ていた。
「あいつの祖国グルニアは、アカネイアの王位に就いたハーディンによって占領下に置かれたらしいが、その光景は弱い民を虐げる蹂躙と何も変わりはしなかった…ロレンス将軍は命懸けでグルニアの王家の双子を逃がして自決した。…まあ、ハーディンがなぜこんな事をしたのか…話は長くなるからな。――むなしい戦いだったさ」

「…自らの武器であるグラディウスを携えたハーディンが、闇に堕ちた光景をあいつは見ていた。…ハーディンは、マルス王子が倒したらしいが、あいつは彼を殺せなかった」

ハーディンが闇に堕ちた理由は、自らが招いた原因があったからだ…分かってくれるな?
ジョルジュの言葉に、レイは静かにうなずいた。
(…けど、あいつは結果的にハーディンを殺してしまった…じゃあ、誰が、悪いんだろう。ジョルジュや、マリクの話を聞いてると…アカネイア大陸の二度目に渡る戦争って…本当は、誰も英雄なんて居なかったんじゃないか?)
俺はそこが、分からないんだ。とレイは空虚に、言葉を紡いだ。



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