ロストレイン〜人でなしの条件

「タンブラー、少し与太話になるのだが付き合ってもいいか?」
「?いいけど、それがどうかした?」
書類の整理中、プロールは椅子に座りながら今度必要になるデータの収束に熱中してる、向かい側の席に座っているタンブラーに話しかける。
「この中で、一番邪悪なの者が居る。立場を切り捨ててまで必死に守ろうとしているオートボット、下級階層でありながらも、戦闘力は侮れない剣闘士クラスのサイバートロニアン、ひ弱で何も出来ないスラムの者達――直感で答えてくれないか?」
「……オートボット?」
「…不正解だ」
え!?オートボットだと思っていたのに!?とタンブラーは悔しそうに叫んだ。
「じゃあ、正解はどれなんだ?」
「正解は―――スラムの者達だ」
スラムの者達?とタンブラーは頭をかしげる。確かにひ弱だが、何を言っているのだろうか。するとプロールは話を続ける。
「スラムの者達は確かにひ弱だ。だが、そのひ弱な彼等だからこそ、無責任な言葉、何をやっても許されるという誤った認識がある」
「…オートボットへの、憎悪?」
タンブラーは困惑した表情でプロールに問いかける。プロールは「そうだ」と言葉で頷きながらも、話を続ける。
「彼等は『弱者だから』と言う立場を利用し、オートボットへの襲撃、スラムでの奪い合いや殺し合い、剣闘士への強いあこがれと無責任な応援をする。彼等を何とかしなければ、何れは暴動か――クーデターが勃発する恐れがある。そんな彼らを何とかしようと、かのオライオン・パックスが評議会に乱入してまで――」
タンブラーは思い出した。ああ、あの騒ぎか…確か、メガトロンの論文をオライオン・パックスが評議会に訴えたと言う事件。危うくオライオンは追放されかけたところだったが、ジアクシアン・アカデミーを経営するほどの影響力が強い議員の一人ショックウェーブとダイアトラスが、何とか匿ったそうだ。危うくエンピュラータ化されるかガーラス送りにされるどころだった…と、この前ロディオン警察署に少し立ち寄った時に同僚らしきサイバートロニアンが噂をしていたらしい。
「…私はそう言う人柄だ。論理や、サイバートロン星の未来を最優先で考えなくてはならない」
プロールはそう言い、与太話は終わりだ、さっさと仕事を済ませるぞ。と口にする。だが、タンブラーはどうしても気にしていることが一つだけあった。
(…そう言えば、プロールは前、あの悪名高いプロテウス上院議員とは知り合いだったらしいっけ)
プロテウスとプロールが話をしているのは確か、記憶の何処かで見た事があるが、プロテウスが言い放った言葉が、忘れられない。

『セイバートロン星の未来を考えろ?庶民らしい発想だな』

…センチネルの一味であるプロテウスにあんな事を言われると、プロールも気にしているのだろう。だが、自分がどんな言葉をかけても、プロールからしたら気休めの言葉ではないのか?クロームドームは頭を少し落ち着かせ、作業に集中する事にした。




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