ロストレイン〜その現実を受け入れる先の悲劇の一歩手先
「元レッカーズ?」
ローラーはレッカーズ。と言う時点で嫌な予感はしていた。あの荒くれ者達が集う部隊の一員であり、相当彼らの言う事を聞ける相手は評議会クラスの大物だろう…しかし、何故そんな噂がロディオン警察に届いたのか?
「いえ、警部――俺とホイールアーチはその元レッカーズの取り締まりの警備を担当する事になったんです。パックス署長の指示で」
「で、その元レッカーズの名前は?」
「――ホワール」
ホワール。その名前を聞いた時点で嫌な予感はほぼ的中しても良いだろう。犯罪行為に加担しており、評議会の怒りを買ってエンピュラータを施された――その噂は耳にしている。スプリングアームとホイールアーチだけでは危険すぎる…オライオンが、彼等だけでは危険すぎる為に自分も彼の警備に参加したのだろう。全く、危険を承知で我武者羅に突撃するのは今も昔も相変わらずだ。いつだったか?強盗事件で人質が二人居る、武装集団にもかかわらず一人で勝手に突っ込んで重傷を負った上にラチェットの小言を聞く羽目になったのは何処のどいつだか。ローラーはスプリングアームとホイールアーチがあのホワールの警備を担当…大丈夫か?と一瞬不安な予感を頭を過ったが、オライオンが無茶を承知で何とかなるのならまあ大丈夫だろう――とスプリングアームの「それよりも聞いて下さいよ!ホイールアーチが」と同僚の文句をただ「はいはい」と適当な返事で返していた。
しかし、そのローラーの期待は呆気無くある事件によって裏切られることになる。
「…警備員二人が死亡と……確認されて……パックス署長が………」
ノイズ交じりの通信を聞き、オライオンだけが無事と言う情報を聞いたローラーはすぐ様彼の居る部屋に駆けつける。オライオンは椅子に座り、うつむいた表情をした。
「――オライオン、スプリングアームとホイールアーチが………」
オライオンは無言で「何も言わないでくれ」と俯き、ローラーはその気持ちを察した。無後で部屋を後にし、情報を聞いたラチェットが「オライオンは?!」と息を切らした表情で彼に問いかける。
「…何も、言うな」
「…は!?お前さん、一体何を…」
「――今は、オライオンの気持ちを察してくれないか」
ローラーは顔を伏せ、ラチェットは「分かった」と来た道を引き返した。ラチェットが立ち去った後、彼は壁をガン!と叩いた。
(――何故、こんな事に―――)
あの時、軽い気持ちで言わなければ。こんな事にはならなかった筈だ。オライオンだけの責任ではない。そう、
今はただ、オライオンが立ち上がるまで、静かにしている事しか出来なかった。