ある後悔

私物を受け取り、部屋を出たその後に――丁度ラチェットと鉢合わせをした。ラチェットはローラーの顔を伺い、何かに気付いたと悟り…自分に話しかけてきた。
「…その手に持っているのは、平和論か?」
「全く、プロールも困ったものだ…いきなり此れを押し付けてきて……まあ、俺があの爆発に巻き込まれた後、消息不明になっていたのは無理も無い――が、お前もプロールの話を聞いてきたのか?」
「生憎、私はお前さんと一緒で言える立場が無いものでな」
「…まあ、そうだな」
「プライムだけがメガトロンに会う権利がある――さっきプロールがそう言っていて、だ。つまるところロディマスとウルトラマグナスだけしか会う権利を持つ事が出来ないのだ。分かるか?」
「…そうだな」
「ローラー、どうかしたのか?……元気が無いぞ」
「――ラチェット、一つだけいいか?」
「何を?」

「――お前は、ファルマの一件を後悔していないか?」

沈黙。一瞬、ラチェットはローラーのいきなりの発言に戸惑いを隠せないが――聡い自分でも分かっていた。オライオンと、アウトライヤーの彼等について事だろう。
ラチェットは黙っていた。分かっているからこそ、何も言わなかった。


『――ローラーへ。此れを読んでいると言う事は、君が受け入れ難い事実を知ったのだろう。確かにメガトロンは大人しく裁判を受ける事になるし、何より君が受け入れがたい事実――ショックウェーブが生きている事と、つまるところ――事の発端の人物だと言う事を。君が知らない内にアウトライヤーの同僚、デルファイ事件、グラインドコアの惨劇が起こっていたのは事実だが、この一件についても、君は私にすぐさま怒りをぶつける事があるだろう―――皮肉なものだな。私もあの上院議員と一緒の事をやっているのだと思うし、ターン、いやグリッヂと同じ過ちを犯そうとしている。もし君が『ロディオン警察の誇り高き警察官』のままだったら、そのままの君でいてくれないか。せめてもの後悔の中での、情けだと思ってくれ。

確かにグリッヂは間違っていなかった。スキッズも正しい事をしていた。けれど、それは世界が許すことをしなかった。あの二人や、チャージャーやショックウェーブ、彼らアカデミーの生徒や師が幸せに生きられる事が出来ないと言うのは、最初から分かっていた。私も諦め気味だったのだ。

殺し合うことが彼等の運命だったのか?ならば、その運命は誰が決めた?虚構に踊らされた彼らに、何かの言葉をかけるべきだったか?

そんな事は出来なかったのだ。デルファイに居るターンと通信した時、彼に慰めの言葉をかける事が出来なかったし、誰かがこの連鎖を止めない限りは、自分にはどうする権利も持つ事が出来なかった。

だから、ローラー。君にこの真実を話した。君がこれを読んでいると言う事はラチェットもオプティマスたちの処に行っていると思う。まだ、何も知らない君に話せる、精いっぱいの真実だ。これを読んだ後は、この手紙を捨ててもいいし、私を一生恨んでもいい。

変えるべき場所を失った君に、慰めの手紙なんて必要ないが――せめてもの、真実だ。プロール』




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