断頭台から愛を込めて

メガトロンが裁判を受ける。その事をプロールから聞いた時は「ふざけているのか」とプロールを責めようとしたのだが――プロールは無言のままだった。プロールは「其の事は本人に聞いてみるがいい」と白けた態度をしていたが、気が立ったままメガトロンが居る独房へ向かう事にした。

「久しぶりだな」とメガトロンはそう言い、自分は「ああ、そうだな」と答えた。何も答えず、重苦しい雰囲気が続く。ローラーが口を開こうとした瞬間――メガトロンがある事を言った。
「……お前に、謝りたい事がある」
それは、ある事実の謝罪だった。

ターンがスキッズを利用したのは事実だ。其れはお前がオプティマスから譲り受けた平和論を読み始めたから、全ての歯車が狂いだしたのかもしれない。

メガトロンがそう言ったのは、自らが語る、グリッヂが何故――自分自身の狂気に苛まれて、おぞましい存在になってしまった理由を。
オライオンから譲り受けた時、初めて彼がメガトロンを信頼している理由が分かった。あの時のオライオンは、本気でこの世界を守りたい、変えたいと願ったのだろう。
だが、圧政による平和と、共存による平和は違うのだ。オライオンもメガトロンも、共存による平和を望んでいた。だが、世界は其れを望まなかった。強硬手段をしなければ、平和を掴め取る事しか出来ない。それが事実だった。
「……お前の理論は、確かに間違ってはいなかった。だけど……」その先の言葉が、出なかった。彼は本気で罪を贖うつもりだ。そして、現実に立ち向かう心算だ。引き留める資格は出来ない。引き留める資格は、オプティマスしか出来ないのだから。

結局、何も言い出せる事が出来ないまま独房を出た。
「…君は、メガトロンに何もお別れの言葉を……しなかったのか」
「出来ない」ローラーは首を振った。プロールは「……そうか」と言葉を返した。するとプロールはまた、言葉を交わす。
「そう言えば、君の私物を渡そうかと思っている所だった。ゼータプライムが倒された後、上層司令部が地下に潜伏していたメンバーの私物を回収した……もし良ければ、私物を受け取ってくれないか」

私物を受け取った。その中に――オライオンから譲り受けたメガトロンが書いた、平和論を見つけた。平和論を読み始めた。その中に――ある一節が胸に引っかかった。

『共存による、平和を』

メガトロンが望んだのは、圧政による平和だった。だが、本当の彼は共存による平和だっただった。スキッズも、チャージャーも、グリッヂも、ショックウェーブも――本当はこれを望んでいた筈だ。圧政による平和ではなくて、ディセプティコンもオートボットも全てが平等に暮らせる世界を。だが、彼等が殺し合う理由なんて――無かった筈だ。結局、何も答えは見出せなかった。ただ、あの日の事を思い返せば――

―――自分は何も知らず、何も望まぬ事を、望んでいたのだろうか。




×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -