或る神と罰当たりな異端者の話

「貴方はそうやって、自分を偽りながら、他人を、他者を、同胞を絶望に追いやって、殺したんですか」
「おや、ドクターがそんな事を言うのは珍しい…私を、恨んでいるのかね」
「貴方を恨んでなんかいません。ただ、貴方が純粋に可哀想な人だと気付いただけです」
「…つまり、貴方の親愛なる友人を殺した私が憎いか?貴方も、憐れな人だ」
「…私だって、誰かを全て愛する事なんて出来ないんです。完璧な聖人なんて――何処にも居ないんです。それは私自身が知っている筈です」
「では、ドクター…一つ問い掛けよう、…スキッズを殺した私を、恨んでいるか?」
「――はっきり言います。答えは……恨んでいません。ただ、貴方がただただ、憐れな人ですね――と、言いたかっただけなんです」
「…………」
「だけど、貴方は――メガトロンの苦しみを、気持ちを、何も分かろうとしなかった。彼は、平和の為に、純粋な思いでこの世界を変えようとしていた。けれど『こんな筈じゃなかった』と言い訳をして…善と悪、いいえ、『正義』と『悪』のぶつかり合いをして――何時か、報われる日が来ると信じていた。でも、来なかった。オーバーロードやシックスショット、そして――貴方の存在が、彼を苦しめていた。『圧政による平和』と言う虚構の大義に踊らされていた…けれど、貴方もまた、彼と同じなのです」
「スパークの存在となった私に、何か意味があるとでも?」
「…本当は、この平等な世界が来ると、笑っていられる世界が来ると、信じていたのでしょう?」
「…それは、遠い、昔の話だ」
「ショックウェーブが、目指した遠い、遠い理想。夢見た理想。けれど、それはもう既に叶わなかった。既に、遅すぎた」
「――ドクター…いや、プライマス。何が、言いたい」
「…その顔は、ショックウェーブの――――貴方は、最初から最後まで、誰かにならなければ、自分が救われないのだと思っているかもしれません…けれど、貴方は、貴方のままで居てほしいのです」
「例え私が異端者だとしてもか?」
「構いません――ですが、もしまた生まれ変わるのならば…いいや、貴方は貴方のままで、居て下さい。私が居ても、邪魔なだけですから」
「…これで、お別れの時間かな?」
「ええ、お別れの時間です――お休みなさい、ターン……いや、グリッヂ。ゆっくり、休んで下さい――」




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