「所詮、それは無理な願いなんだ」

それは何時だったか、もう戻れないあの時の話。

目の前に居るのはラチェットの友人?弟子みたいな存在と、オライオンからの話は聞いていたが、まさか此処までしかめっ面な性格をしているなんて想像もしていなかったのだ。クレムジーク印のドリンクなら、此処なら取り扱っているのかもしれないと思い、彼に問いかけたら物凄く滅茶苦茶な事を言われた気がするのだ。

「自分で探れ」と。
 
この後、色々何とかクレムジークドリンクがある自販機を発見してどうにか手に入れた後。休憩室で彼と、話をしていた。ある時、こう言われたのだ。
「それで、お前は時折複雑な表情を見せるな」
スプリングアームとホイールアーチの一件以来、顔色を暗くさせる事があったオライオンだったが、ショックウェーブ議員と出会った事で顔色を明るくさせる事が多くなったのだが――自分が、複雑な表情をする事があった。この複雑な心境は、嫉妬なのだろうか。だが、自分はこれ以上、彼――ファルマに、言及する事はなかった。


「無理な願いなんだ…」
サイバーユートピアのデータを集めている最中に、あの時の事を思い出す。ラチェットとファルマ、ショックウェーブとアカデミーの彼等を思う。一緒に、平穏に暮らせるなんて、最初から無理な願いなのだ。自分は、そんな願いがあって欲しいと考えた。だが、それは無理な願いだと分かりきって、嘆いて。
グリッヂとスキッズの殺し合い。
グリッヂが殺したファルマと言う存在。
救う事すら叶わないショックウェーブの存在。

願いは、どれも叶う事は許されなかった。許される筈が、無かったのだ。




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