大義〜カルドゥスの願い

「やはり、大義なんて本当は――いらなかったんじゃないのか」
ローラーはラチェットを見て、そう言いながらエンゲックスを飲んだ。ロディマスを指しているのだろうか。ああ、やっぱりオライオンの事だろうな――とラチェットは言葉を返した。
「プライムになると言う事は、大きな代償を払わなければならない。オプティマスは、大きな代償を払った――私は、彼を責める事は出来なかった。それが彼の進む道だ…ショックウェーブや、スプリングアームとホイールアーチが居ない、誰が彼を支えると言うんだ。それでも彼は、大義を掲げながらも、自分を保とうと…」
「…再び別れてから、暫く会っていないんだろう。だが、あいつは…『正義感が強いロディオン警察署長』と皆は言うけれども、本当は大きく何かを背負い込みがちな性格をしているんだ。俺や、ラチェットに悩みを打ち明ければ、助けにもなれば良かったんだ」
ショックウェーブの一件から、オライオン――オプティマスは、大きく変わった。何かを抱え込みで、本心すら打ち明けられない状況が続いた。ゼータプライムの戦いや、地球での出来事、そして――あの悲劇が。
「…私は、本当にこれで良かったのか。と今までずっと、悩んでいた。ファルマの一件のあと、アンブロンを失ったのも、ファーストエイドに大きな荷物を背負わせたのも――私の責任があった。それに――ドリフトが一度、出て行った時に、ファルマもあんな気持ちだったんだろうか。ただ、お前さんが行方不明になった時も――バンブルビーが、死んだ時も――他者の為に、自己犠牲をする彼等が、私は、本心でずっと嫌になったんじゃないのかと」
ラチェットの思い切りの行動で、ドリフトを連れ戻した行動は――それは、正しい行動なのだと信じた。ただ――自己犠牲する精神が、本当は嫌になってきたんじゃないか。と何処かで引っ掛かってきた。

「…一人で自分を犠牲にしながら死ぬくらいなら、人に看取られて死んで来い」

その、思い切りの精神がラチェットの今も昔も変わらない精神だった。
「ローラー、お前さんもだ!!!ゼータプライムの戦いの時だって勝手に無茶をして一人で特攻して…!無断で特攻するなんて無茶すぎる!」
ラチェットの図星と思える発言に、ローラーは黙り込んだ。
「…だが、もうあの無茶はするな。二度と他者を悲しませるような、自分を傷つけてまで行動するのは止せ………?どうした、何頭を抱えているんだ」
ローラーは腹を抱えて笑った。何時以来だろう、こんな会話をしたのは。
「…こうやってお前と、話をするなんていつ以来だろうな。今までずっと、ピリピリした会話だったからな」
「…やはりお前さん、本当は今も昔も根っこは変わっていないのではないのか?」
「有難う」
ラチェットはため息をつきながらも、今度スワーブバーに誘ったらドリフトに絶対無茶も承知なローラーの愚痴を吐いてやる。と誓った。




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