プロールはデルファイのCEOに就任したファルマについて調べていた。優秀なCEOだ。幾つかの医療施設を転々とすればあの神の医師、アダプタスの手と言われているラチェットの後任に就けるだろう。と期待されているラチェットの師匠と言われているファルマ。ただ、問題とされているのが『一つ』あった。
デルファイ――惑星メッサティーンは、あの悪名高いDicepticon.Justice.Devision…通称DJDの息が掛かっている場所だ。歴代のデルファイのCEOはそのDJDのリーダーの公平、平等と言わんばかりの悪魔との契約をし、深い白い闇の中に消えて行った。
DJDのリーダー、ターン。オートボットでは『ノンストップキラーマシーン』と言われるほどに畏れられているDJDの長。裏切り者のディセプティコン、其れに関わった者達――オートボットとディセプティコン問わず――も、惨たらしく拷問して処刑する殺戮集団…スプリンガーが何時だったか、拷問を趣好とするプレデターズとは一味違うと言われている拷問処刑集団。裏切り者を処刑する、ロクでもない集団と評していた。しかし、ターンは違う――彼の根拠は『破壊大帝メガトロン』を狂信的に信仰している。考古学者、音楽愛好家、古典や音楽を愛すると言う、一風変わった男だ。しかし、戦闘となれば音楽――正確には、音でサイバートロニアンを殺せる能力で殺戮を行う。
(ファルマには荷が重すぎただろうか…)
しかも厄介な事に、デルファイには元ディセプティコンの逃走兵士の一人のアンブロンが居る。DJDに目を付けられる確率が高いだろう。其処はファルマの技量や努力次第であるが――これでは自分もあのプロテウスと同じだな。と心の中で苦笑しながら、そのメッサティーンを居城としているピースフルティラニーに定期通信していた。
『やあ、司令官殿。また会ったね』
優雅な口調をしているこの男は、オートボットの上層司令部の自分と対等と会話をしているが、恐らく戦力はあちらのほうが上だろう。何処か余裕を持った声をしている。プロールは「御託はいい、本題を話せ」と負けじと冷酷に言った。
『まず、メッサティーンの事だが…デルファイの新任CEOとなったあのドクターは、非常に面白い性格をしている。退屈を紛らわしてくれるか、非常に楽しみだ』
「そうか…だが、ファルマはあのラチェットとは違う――時折容赦ない性格は師譲りであるが、君が彼をどう見るかは、君の采配次第だ」
『采配次第?』
『――君の御友人を利用しても?』
そのターンの容赦ない言葉は、まるでプロールの心を見透かしているようで。そのバターナイフのように柔らかく、刃物みたいに鋭い心は、プロールの心を容赦無く突き刺した。クロームドームとスプリンガー。インパクター。そして――だが、プロールは負けじと言わんばかりに、ターンに反論するように答えた。
「だが、君も同じだ…君も、元同僚を利用しただろう。嘗てはアカデミーでは優秀な成績をとっていたスキッズを――」
その言葉に、ターンは「ああ、彼か」と答えた。
『君は鋭く、察しがいい。ああ、その通りだ。そして、彼は――』
――優秀な同僚だったよ。
ターンの言葉に、プロールは少なからず、言葉に引っ掛かった。スタースクリームはメガトロンに複雑な思いを抱いているし、バンブルビーもオプティマスに色々複雑な事情を抱いている。自分も同じだ――結局は、同じ事の繰り返しではないか。と自問自答をする。これでは、自分もあのプロテウスと同じ、汚い事をしようとしても、目的を果たすべき存在となってしまうではないのか?そして行方不明になったローラーや、スキッズや消息不明になったゲッタウェイについて思う。
「まるで私も、あの男みたいに正義を模した人でなしになったんじゃないのか…?」
プロールはデータパッドを置き、机に伏せ――少し仮眠をとる事にした。