ロストレイン〜失いの雨、その記憶との共生

「兄弟も、同僚も、絆も、何もかも、繋がりはただの記号に過ぎない」
そう言い、師――記憶外科医で最高峰のネモサージャリー技術を誇ると言われている医者であるトレパンは、マイクロプローブを兼ね備えている手を磨いていた。タンブラーは顔を見上げ、椅子に座っているトレパンに「どうしてですか?」と尋ねた。
「所詮は、何時か断ち切られるもの。ただの記号だ。友だった男と男は悲劇によって引き裂かれた。同僚が一緒に死んだ。信頼している上司が殺された。そうやって、殺し殺されの繰り返し、死んでからではもう遅い。既に彼は死んでいる――其処に居ないからこそ、深い悲しみや孤独に苛まれる。その一方は相手が居ない事に深く傷付く。そうやって、片方が殺され、居なくなった現実があった」
トレパンは椅子から立ち上がり、機材を片付け始める。
「繋がりなど、ただの記号だ。CEと言うのがあるが、繋がりなど記号だ。いつかは、そうやって裏切られ、死に別れると言うのに。サイバートロニアンたちは、何故これに執着をしているのだろうな」
師であるトレパンが、いつも廊下でフロイドやロブと何かの話をしているのは知っている。あれは繋がり?いいや、違う。とタンブラーは心の中で否定した。あれは『繋がり』ではない――『共犯』だ。繋がりとは違う、個を個で保ち続ける。トレパンの戯言を聞いていると、ある事に気付いた。

――師は、ただ、そんな事を言っているけど、本当は、記憶がほしいだけだろうか。

探求は――好奇心は猫をも殺す。結局アンタだって記憶や探求への繋がりが欲しいだけじゃないか。そして今は、もう居ない師に愚痴を零した。そして自分も、リワインドを亡くしている身だ。ドリフトを利用し、バンブルビーも失い、彼等を切り捨ててまで自分を保とうとしているプロールに話しかける。これが、ある一つの再会だった。

「アンタは変わったよ、プロール」
「お前は変わってないな、クロームドーム」
そうやってまた、繋がりや誰かが失う、日々が続く。




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