水星イルフロタント

ソフィは悩んでいた。ソードに頼れば行方不明の兄とエルドラドとは何かがわかるのかもしれないのだと。しかし、そんなソフィに立ちはだかる壁(?)が目の前に現れていた。魔戒法師にして雨男と言われているルークである。普通に見た目からすればおとなしい青年であるが、口を開けばかなりの冷酷さが表れている。がんばれソフィ、めげるなソフィ。彼を超えてソードに頼らなければアガルタは見えてこないぞ。しっかりしろソフィ。と彼女はこの時思った。が、ルークは今回、コーヒーを飲んでいるが――テーブルに置いてあるのはふわっとしたアイスクリームな何かが小皿に盛ってあり、その上にキャラメルソースがかけてあるのだ。
「ねえ、この料理なーに?」
ルークは答えない。コーヒーを飲んでいるだけだ。すると彼は口を開く。
「イルフロタント」と。
「イルフロタント…?」
ルークは次のように説明をする。
「フランスの代表的なデザートであり、直訳すれば『浮いた島』と言われている。カスタードクリームの上にメレンゲを浮かせ、キャラメルソースをかけた逸品だ」
お前はアレか、百科事典か何かなのだろうか。
「…でも、何でそれを食べてるの?」
「…母がよく作ってくれた」
ああ、うん。人には触れたくない過去があるのよ。とシスターからの教えで、黙っておく事にした。するとカランカラン。とベルの音が鳴り、現れたのは――。
「あ、ソード!今度こそ、エルドラドか何かを教えてよっ!」
「げっ…って言うかルークも一緒か」
イルフロタントを優雅にフォークとスプーンで掬って、食べていた彼はウエイトレスが置いて行ったメモ帳を読んだ。
「今回のホラー退治は、ギャング組織『メルクリウス』のアジトからホラーの気配を感知した。目撃情報によれば『蛇がにょろにょろしているような気配を感じた』との噂だ」
「蛇がにょろにょろ…なあ。まさか蛇のホラーじゃないだろうな」
「メルクリウスは水星の名前の由来となった『ヘルメス』からとられている。泥棒と旅人の神で、ギリシャ神話で有名な神だ…そしてヘルメスの杖のケーリュケイオンは、二対の蛇が杖に巻き付いているから恐らくは蛇の体形をしているホラーと推定される」
「出来れば戦いたくない相手だがなー…気味が悪いホラーだ」
「何を弱音を吐いている」
ルークとの会話に、ソードは意外と乗っているようだ。するとソフィはルークの口についているクリームの痕を指摘しようと口を開こうとする、が――。

「…出来れば、イルフロタントはカロリーが高いから抑えていかんとな」

ルークはその部分をナプキンで拭き、案外、カロリーとか気にしていたんだ…。ソフィは、この時思ったのであった。
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