「そういえば、長年続いた争いも、1217戦目で俺の勝ち越しだな。今となっては何が切欠で始めた勝負かも覚えていないが。それでもこの勝負に勝った側が、相手に一つだけ要求を通せるというのだけは覚えている。こんな、まともに身体も動かせない状態ではあるが、這ってでも言ってやろう。勝ち越した俺の要求は一つ、叶えられないとは言わせない。」
――ガーラス9から生還したインパクターの言葉。
「死は損失だと思うか?」
オライオンの言葉が、重く圧し掛かった。スプリングアームとホイールアーチの葬式の後、ロディオン警察署内の食堂でローラーはオライオンの話を聞いていた。あの評議会の乱入は、ご丁重にご都合主義に書き換えられた。スプリングアームとホイールアーチの死と、クロマ達の処分は御丁重にセンチネル達が謹慎処分と下した(どうやらあの議員の話によれば、クロマ達はセンチネルやプロテウスの手下らしい)。
「いんや、大事な同僚を失った事に変わりはないよ。飯が不味いったりゃありゃしない」
「そうか、お前の言葉で…少し安心した」
「そうか」とローラーは固定しているエネルゴンを食べ、オライオンはおーらーに感謝の言葉を述べた。
「ただ、あの事件以来――お前の顔が時折、重い表情になってたからな」
「ああ、今は少し、和らいだ…あの議員のおかげだ」
あの議員。間一髪シャドウプレイ送りにされかけたオライオンを救出したあの議員は、ショックウェーブと言った。彼の名前を知らない者は居ない。ジアクシアン公共アカデミーを経営しており、宇宙開発等を行っている議員だ。そんな議員がオライオンを助けたのは驚きだ。
「ただ、私に対して彼はまるで希望に満ち溢れている目をしていたんだ…私にマトリクスの話をしたのは驚いた。いったい私に、何の期待をしているのだろう」
「まさか、お前が次のプライムになったりして?」
「ローラー、笑えないジョークは止せ」
ローラーのとんでもないジョークにオプティマスは困った表情をしているが、彼はオプティマスが嘘の表情をしていることに気付いた。
――こいつ、本当に今の現状を変えたいんだろうな。
評議会制度、厳しく成る差別社会、本当に伝えたい事が伝えられない事実。ショックウェーブとの出会いが、オライオンに何をもたらすのか―――今は、まだ分からない。だが、この出会いが機転になると良いのだが。
ローラーはそんな事を考えながら、ドリンクを飲んだ。