善ってなんだと思う。困っている人を助ける、とか仲良くする、とか、ダレかを傷つけないようにする、とかそういうことじゃないよ。確かにそれもあるんだけど、そういうのはあくまで「善」の細かいディティール。良いこと、善、っていうのは、突き止めれば「ある何かの価値観を持続させる」ための意志なんだよ。
――ある精神科学者の言葉より。
オライオン・パックスの言うメガトロンが唱える平和、それは共存による平和だと思っていた。共存。誰かが手と手を取り合い、繋いで平和を謳歌する世界。
それがどうした?それが善の道とは言うが、それが平和に繋がる道だと思うか?
「第百三代サイバートロン議会の議員にして、栄光に包まれし創始者の子孫、そして聖なる血統の守護者である――あなた方に申し上げる」
ユートピア、ディストピア、なんて理想郷と反理想郷の言葉があるんだけどな、あいつはユートピアを信じている代物だ。ユートピアこそ平和に繋がる道がある。それがオライオン・パックスが信じた道だと思う。ま、でもな――
「彼はホワール、法を破りました。あなた方の友人は放免を迫ってきたが、私は断固、拒否した。結果、二人の部下が犠牲になった…あなた方に気付いてほしい。些細な行動でも、重大な結果に繋がり得る…現実から遠く離れたこの場所で、あなた方は内輪だけの議論を重ね、我々民衆を抑えつけるべく作られた法令を発する。そして法令に違反した者は、容赦なく罰せられる」
理想の為に誰もが生きられるユートピア。とは言うものの、やってる事はディストピア。二律違反のカコフォニ―だと誰かが笑う。いんや、俺達全員センチネル・プライムの自動人形と言う訳だ。
「友人の名は、メガトロン。彼には三つの疑問があった!現体制を維持したいのならば、避けては通れぬ疑問だ!一つ目、あなた方の権力で誰が利を得る?」
光には影がつきものだ。それは永遠が無かろうと、切っても切り離せない縁だ。
「二つ目、あなた方が説明義務を負っているのは誰だ?」
この何も変わらない茶番劇に、彼は叫ぶ。
「――そして、三つ目!どうすればあなた方から解放される?!」
――何も変わらないこの茶番劇に、新たな客が乱入する。そいつの名は、俺やオライオンからは永遠に忘れられない名前になった。
「――オライオン」
――全部、話してやる。このユートピアでの他愛もない物語を、な。