かわいそうなあなたにどうか幸あらんことを

アイアコンからユライヤ、カリスからヴォス。今日も不甲斐無い性格をしている幼い姿をした彼女は、その手に杖を持って一人旅をしている。正確に一人で旅をしている訳ではない。自分と言う存在を携えて今日も何処か旅をしている。此処には何もない、セイバートロン星を飛び出そうか。そうしたら別の星に行って旅を続けよう。と考えている彼女を見て、私は彼女に問いだした。
「失礼、ドクター」
「何だ」
「…お腹が空いていないのか?」
空いてない。と彼女はそう言うと、そっぽを向いた。だが彼女は皮肉そうに嫌味を言うように私に答える。
「貴様こそ、腹が減ってはいないのか?」
「何が?」
「貴様が腹が減ってしょうがないから、コグを寄越せと言ってくるだろう」
「ああ、確かに…これは失礼」
全く。と彼女はため息をついて、街の外へ出る。そうしてまた、彼女は一人で旅を続けるのだろう。

彼女――ファルマと私の出会いは何時だったか、アダプタス神を祀る神殿の地下で偶然眠っていた私を見て、彼女は恐る恐る私を見て「お前、竜なのか?」と尋ねた。私はそうだと答えたら、ファルマはそうかと納得したように答えた。どうやら彼女の話によると、彼女は訳も分からずこの神殿の巫女に選ばれ――生贄としてこの地下に落とされたらしい。成程可哀想な事だ。と心の中で笑うと、ファルマは「外を出たい」と言い出した。私は「契約したいなら此処を出してあげよう」と返せば、ファルマは納得した表情で「分かった」と言い、契約をする事になった。

我ながらあの時の事を思い出すが、ファルマは地図を持って何処へ行こうかと考えていた。
「そう言えば貴様は、最初私を見た時にどう思っていたんだ?」
あの時は――まるで死んでも構わない表情をしていた。と返そうとした、が…まるで全てを諦めていた表情をしていたとも思っていた。私は
「生意気な幼い子供」と返した。するとファルマは怒りながら「貴様は私を何だと思っているんだ!」と杖でぺちぺちと私を引っ叩いていた。
彼女は幼い割には大人だったな――と心の中で付け加えながら、ファルマの罵声を静かに聞いていた。



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