揺蕩う

遠い微睡の中、誰かの温もりを感じるような気がした。意識が薄まる中、暖かな温もりが自分を包むような気がした。

授業に使う器材や、記憶外科医について関する本が部屋に散らかっている。自分は大雑把な性格であって、あまり片付けが得意ではない。だが、あまりにもベッドの上にも物や器具、本が散乱していると流石に片付けたくなる。本を手に取り、本棚へと整理する作業に移る。器具や其れに使う道具などは棚に置き、いらなくなった物はゴミ箱へと移す。そんな単純な作業を繰り返している内に部屋は綺麗になり、自分はどっと疲労が溜まり――白衣の中が、汗でだらだらだ。気持ち悪いと感じ、白衣を脱ぎ捨てる。
(疲れたな…)
そう言えばさっき彼が任務で誰かの返り血を浴びて帰還したので、自分が小言を言いながら返り血を拭き、シャワーで綺麗に洗い流したのだ。その疲労もあるだろう。
ベッドに倒れ、シーツに覆い被さり――眠る。
(今日は、流石に…疲れた、か…?)
最近はあまり、仮眠も休憩も取れていないと気付いた。前に自分が此処に浚われる前は――あの精神外科医が「医者でも休憩や仮眠は必要なんですよ」と言っていたが、自分はどうだったか。あまり休憩が取れていないと自分でも薄々思っていた。
――ああ、でも。
こんなに安らかに眠れるのは、いつだったのだろうか。深い微睡に溺れる中、暖かな温もりが、降りて来たような気がした。

ふと、お気に入りの映画を見終わり、映像を切り――ワインが入ったグラスやローストビーフの食べ残しを片付けた後、自分の自室に向かおうとした時、すうすうと寝息が聞こえたのは、先生の自室の方だった。自室に入ると、普段は散らかっていた器具や書物が綺麗に片づけられており、ごおごおと冷房が入る音がした。ふと、ベッドの方に目を向けると、すうすうと寝息を立てて眠っている本人の姿が見えた。ふと、ベッドに身を起こし、寝る体制に向けながら、腕枕をするような形で自分自身も目を閉じる。このまま、夜まで眠ってしまおうか。そうだ、眠ってしまえば――一緒にいられるのだ。
「おやすみ、先生」
自分はそう囁き、深い微睡の世界へと入っていった。



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -