滅びゆく幻のために

ナナ姉へ。

今、何処に居るのでしょうか。これを読んでいる頃には、私達は死んでいるのかもしれません。ナナ姉は厳しくて、私達にアドバイスをしてくれる私達のお姉ちゃんでした。でも、私達は知ってしまったんです。パパ達がココロとミツルの記憶を消してしまった事を、彼等が愛した記憶を全て、消してしまった事を。私達のパパはもう居ないんだと、ナインズから告げられたのです。どうして、そんな酷い事を。と私達はパパ達を責めました。特に怒っていたのは、フトシでした。フトシは「大事なココロちゃん」をミツルに安心して任せられると思い、結婚式で神父役を立候補したんです。彼等の幸せを見守られるように、と。安心して見守られる存在だったんだと思います。彼らのするべき事を――知るべきでは無い、と。ルールを守ったからと、ナインズがAPEの人達を率いて結婚式を壊してしまったんです。其れに一番怒っているのは、間違いなく彼でした。

でも、ナナ姉はナナ姉。大事な私達のお姉ちゃんだからこそ、本当のナナ姉に変わりはないんです。だけど――どうして、人の命を簡単に切り捨てられでしまうのか、パパ達の感覚が分からないんです。何故、どうして。そんな酷い事を簡単に出来てしまうの。と。思わず絶句してしまいそうでした。
でも、私やゴローは、怖いんです。この戦いが終わったら、本当に自由はやってくるのか。本当に私たちは自由なのか――ほかのコドモ達を置いて、私達がのうのうと生きていて本当にいいのか。疑問が付きません。あのミストルティンの生活は、本当に楽しかった。けれど、そんな時間は、もう戻ってこれないんです。
勝手に手紙を書いてしまったけど――其れでも、私達が生きた証を、何処かに残したかったの。

ナナ姉、もし生きていたのなら、私達と一緒にハチさんと一緒に生活出来たらと思えたのに、もう出来ないと思うと、涙が止まりません。

今まで、ありがとうございました。 イチゴ


title:カカリア



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