君と僕が壊してしまった世界

目の前にはパセリが飾られているステーキが、皿に乗っている。盛り付けられているのは人参とコーン。手に持っているのはフォークとナイフ。手袋を脱ぎ、ナプキンをする。マナーの作法は知っている。だから、ステーキをフォークとナイフで上手に切り分けて、それを口にする。肉の味がする。それはそうだろう。最高級のサーロインステーキなのだから。命が命を食べる、食事をしながら、戦争で人を殺している自分を重ねる。命を持つ人が命を持つ人間を食べる。戦争とはそう言うものだ。食事を終え、ナプキンで上手に口を拭く。
肉は、竜、牛、羊、鳥――そして人間。出された食事を食べる事は、命が命を喰らうと言う事だ。命が命を食らわなければ生きていけないのだ。戦争とはそう言うものだ。

「旨かっただろう」

目の前にいる紅い髪をした男は、上手にステーキを優雅に食べながらそう呟いた。二人だけの食事会、ドルーアと同盟を結んだ王と騎士による晩餐会。主催者はこの男と自分、ディナーは人の命、オーナーはガーネフとメディウス。食事をすればするほど、味がしなくなるのは何故なのだろうか。フォークで上手に肉を切り、ナイフで切って分ける。人が人を食らう戦争は、食事と同じだ。テーブルの上に置かれている蝋燭が、暗闇の部屋を照らしている。
「お前は草食主義者だろう。人を殺したくない、人の命を大事にしている。俺は肉食主義者だ。人の命を喰らう。普通は対立する筈の俺達だが、食べ物を粗末にする輩をいつか始末する為に、同盟を結び、晩餐会を開いている。そう言うものだろう。人間というのは、結局は何かを食らわなければ生き残れない」
フォークで肉を突き、ナイフでそれを切り落とす。肉は人の命と同じなのだ。
「でも、貴様も同じなのだろう。そうして、のうのうと肉を食べている。俺と同じだ。人殺しなのだろう。肉食主義者だ。だから、お前は聖人の仮面を被り、人を殺している――聖人など、聖女など、何処にも存在しないのにな。貴様は、偽善者か何かなのだろう?」
ただただ、晩餐会は続いていた。


「貴方も結局は、草食主義者ではないか」
仮面を外し、たったひとりだけの晩餐会をする。目の前に出されたのは、ステーキだった。
「それでも、貴方は妹の為に戦った。妹の命を失いたくないが為に、戦ったのではないか。私も貴方も、似た者同士だったのだろうに」
そして自分は、ステーキを口にする。
「美味しかった――こんなにも、命の味がするなんて。夢にも思わなかったんだろう。」





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