Bluebell wood

※某アニメパロ。原作知らなくてもわかる程度。

「貴方は、不思議な人ですわね?」
名門貴族のお嬢様である彼女から見たら、私は不思議な人なのだろうと思われても仕方がないのだろうか。
屋敷の庭で、トルバドールの女性――ルフレの馴染みであるラーチェルは、私の事情を知っている数少ない一人であった。彼女は名門貴族の一員であり、幼馴染のルフレが率いる少数規模の自警団をまとめ上げる副団長である。
「ルフレから話は聞いてますわ――『びっくりしたよ。正直発見した時は血塗れであと一歩遅かったら死んでたんだろうね』と仰ってましたから、ルフレに感謝する事ですわよ」
恐らく、彼女も治療に加わったのだろう。「ジャムカにこれがバレたらどうなる事かと思ってましたわ!!」と、恐らく彼女の馴染みの一人である男の事を言いながら、少し怒っていた。
「これからどうしますの?故郷に戻れる訳にはいかなくてよ?今現在、ロレンスと言う悪名高い将軍が牛耳っており――戻ったらクーデターが再び勃発しかねませんわよ?貴方が生きていたら恐らく最悪の事態になりかねませんわよ?」
彼女なりのアドバイスなのだろう。ラーチェルは、杖をくるくる振り回しながら屋敷の外の芝生を歩いていた。

「仕えるべき王に忠誠を誓うのに、騎士として生きて死ぬ。とんでもない過ちに気付かなかったら、何かが変わっていただろうけども――仕方ありませんわね。人質取られたから、手足も出せなかった状態ですわね。等値交換って事なのでしょうかしら」
「そうか」と自分はそう言いながらも、ルフレの言葉を思い返していた。

『常に勝者が正しいなんて事は絶対に有り得ない。僕の前当主は――相当酷かった。闇の部族の一員であった――僕の父だった…けど、止むを得ないから、自らの手で父を殺めた…それが、正しいのか、分からなかった。けれど、その結果…ラーチェルやジャムカが僕に付いて来てくれるようになったのは…偶然かもしれないけど、必然なんだろうか。でも…僕は、ミシェイルと一緒だと思っている。父親殺し…正直、笑えないジョークなんだと思っているんだろうけど…さ』

「…常に、勝者が正しいなんて、有り得ないと思えるのか?」
「有り得ないと思いませんわ」とラーチェルは即答で答えた。もう夕暮れの時なのだろう。日が沈んでいく。
「今のアカネイア国王、相当酷いですもの。あの即位した優しい笑顔が一転、悪魔の顔になっているのですもの。王妃だってご病気だと仰っていましたけれど、姿を見せていませんわ。勝者が正しいなんて――正直、思えませんわ。酷い事態になっていますもの。正気ではありませんわ」
勝者が常に正しいとは思えない。ラーチェルはそう言っていた。恐らく、自分の姿を初めて見たあの自警団の一員であるフィルと言う少女剣士も――「貴方、誰?」と困惑そうに見つめていた。ルフレは彼女に対して「いやあ、自警団に入りたいと言っていた騎士なんだ」と誤魔化していたが――剣魔を叔父に持つ彼女から、私の戦い方の目が鋭かった。あの戦い方は新入りの腕前ではない。と。
「勝者が正しいなんて、有り得ない…貴方の言い分は正しい」
「そうかしら?わたくし、少し愚痴っただけなのに?」
彼女の言い分と自分の考えは、一致している筈なのに――言い分が違いすぎる。故郷にも戻れない男に、ルフレは手厚く受け入れた。

「貴方ってやっぱり…変な人ですわね。騎士の為に死んで、それでも死にきれなかった…やっぱり、ニーナ王妃の愛の力なのでしょうかしら?」

私は、何も答えないまま…「そうだな」と答える事しか出来なかった。

「やっぱり、変な人ですわ」





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