雛鳥の行末

・flowerの13日の話なので、先にそれを読んでいないといまいち意味が分からない部分があります。

その日、幼い彼女に連れられ――森にやってきた。

「この森は、いつも動物や小鳥達がやって来るんだ」
まだ幼い少女ながらも、甚大な魔力を秘めている魔導士でありながら、一緒に戦った身。しかし、彼女はこっちこっち!と言い、走って行った。元気があるな。と心に思いながらも、彼女はある止まり木に辿り着いた。
「ほら、鳥が雛鳥に餌をやってる。ボクは一度見たかったんだ。過保護なお兄ちゃんったら何時もボクが何処かへ行く度に五月蠅いんだから」
冷静な兄の喧しさに少し文句を言いながらも、彼女は止まり木の上の鳥の巣を見た――が、彼女は「あれ?」と巣の下に、何かが倒れている事に気付く。
「…この雛鳥、怪我してる。取り敢えず、回復魔法を施さないと」
彼女はそう言い、怪我をしている雛鳥に回復魔法をした。傷口が見る見る塞がり、彼女は雛鳥を巣に戻そうとしているが、どうにも身長が足りない。其処で私は彼女を車いすにして、雛鳥を巣に戻した。

「…雛鳥、凄く苦しそうだった。此処、鴉とかが入ってくるから…多分、襲われたんだ。でも、ボクの回復魔法で何とか処置したから、大丈夫かも」
彼女はそう言い、パンパン。と手を振り払った。しかし、彼女は私の険しい表情を見て――どうしたの?とポツリと呟く。
「――ああ、何でもない」

「この小鳥さん、怪我してるわ」
幼い王女はそう言い、どうしよう。泣きながら言った。このまま死んじゃうの?と今にでも泣きそうだ。幼い王子も「何とかならないの?」と悲しそうな表情を浮かべた。二人とも、人を思いやる心が強い。これなら安心して国を任せられそうだ――すると、二人はこっちを見て、「どうしよう、小鳥さん…かわいそう」「僕たちじゃ、どうにもならないのかな」と言っている。私は、彼等に向かって――こう言ったのだ。
「自分たちではどうにもなれない事を、他の誰かに頼れば…きっと、何とかなれますよ。ですが、頼りすぎる事も良くないと思います…その時は、自分たちで出来る限りの事を尽くせば良いのですよ」
その時の言葉を、今にでも忘れない。

「わあ、見て!小鳥さん、空を飛んでる!」
彼女は燥いで、怪我をした鳥が空を飛んでいる事に喜んでいた。近くに居たシスターが、小鳥の怪我を治してくれたのだ。幼い王子は「よかった、空を飛べたんだ!」と彼女と一緒に喜んでいた。
あの日の風景を、今にでも忘れていなかった。


「――いや、少し…過去の事を思い出していただけだ」
「ふーん…でも、何か険しい表情で雛鳥を見ていたけど…大丈夫?」
彼女はそう言い、木の陰に座った。静かな風が、さあっと吹き込む。彼女は私を見て、こう口にした。
「雛鳥が死んじゃったら、ボク…どうしようって思った。きっと、親鳥も悲しそうだったんだろうなーって。傷ついた小鳥を、誰も助けてくれないなんて…不公平過ぎるよって思う。…この言葉、シルクの受け売りだからね」

傷ついた小鳥を、誰も助けてはくれない。あの時だってそうだ。必死で部下と一緒にニーナを逃がした事、捕らえられ、ドルーアで不本意な戦いを強いられた事、戦いに敗れ――自分が気付かぬ内に、ロレンスが死んだ事、双子の王子と王女も、殺されかけた事、そして――何より、愛してやまない祖国が蹂躙された事。

「…だって、不公平だもん。傷ついた小鳥を、誰も助けてはくれないって…そんなの、可哀想だよ」

ああそうだ。誰も助けてはくれなかった。だから、誰かを頼る事すら出来なかった。自分の身で、自分で解決するしかない。

「――じゃあ、一緒に帰ろうか」
「ああ、そうだな…君と話をして、少し気が楽になった」
気が楽に?と困惑した表情を浮かべたが、彼女はその言葉の真意を知る事は無かった。

罪の重さが、どっと押し寄せる感覚を知らないのだろう。それを、彼女が知らなくて――本当によかった。と、心の何処かで安堵していた。





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