原罪の聖女

原罪とは何か、考える。
始まりの罪、始まりは、全ての発端の意味を持つ。彼女――ニーナが、そう…自分自身に恋焦がれなければ、何か変わっていたのかもしれない。グルニアも、或いは――大陸は、変わっていたのかもしれない。彼女自身も、大陸の為に苦渋の決断を下した。始まりの、原罪の聖女を――彼女は、ハーディンを愛する事に苦悩していたのだから。愛は、時に非情な結末を迎える事もある。例えば――彼女を救う為に下す事しか出来なかった苦渋の決断。原罪とは、始まりの罪と言う意味を持つ――彼女に恋い焦がれた自分にとっても、原罪を作ってしまったのかもしれないと自分を嘲笑う事もあった。けれども、彼女に出会わなければ――騎士として生きられない自分を作ってしまったのだろうか。
ハーディンを闇へと堕ちた原罪を作りし聖女――ニーナは、自分に恋い焦がれた。それは、自分自身と未来への為の福音で、苦悩の末に下した――決断。
例えば、自分がどう行動したとしても、結果は変わらないだろう。結局は、誰しもが原罪を作るのだから。あの若き王子が、悲壮なる決意を胸にハーディンを下したとしても。そう、結局は何も変わりはしないのだ。残るのは、彼女がこの悲劇を生み出した原罪の聖女となった結果だけ。かつて自分が持っていたグラディウスを、ハーディンが振るったとしても、若き王子が持つファルシオンに敵わなかった――そう、例えば、自分を超えた――彼等の力は、凌駕していると言えよう?だから、私はこの戦いの――彼女の原罪から始まった結末を見届ける事しか出来ない。傍観者気取りなのか、其れとも――分からない。そう、この結末を迎えるのは、人か――竜か、光か、闇か。平和な朝を迎えるのは、何方だろうか?
そもそも――彼女が、私に恋焦がれなければ、何かが変わっていたのかもしれない。彼女の苦悩、皇帝と化した男の悲劇、そして――そもそもの原罪を作った、名を捨てた自分。結果的に変わらないだろうか、それとも――運命は変われなかったのだろうか?

原罪の聖女と化した彼女――貴方を救うしか出来ない自分を、どうか嘲笑って欲しい。
黒騎士でもなく、貴方の為の一人の騎士としてでも無く、ただ一人の人間として、名を捨てた男として、死人として、救う事しか出来ない自分を、どうか――嘆いて欲しい。

原罪を作ったのは、貴方ではない――この私なのだと。
結果的には、誰しもが罪から逃れられないのだと。どうか、私を責めて欲しいのだから。





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