Hollow

・フ/ァ/イ/ア/ー/エ/ム/ブ/レ/ム/紋/章/の/謎の内容を含みます。

「お、アスロックじゃねえか…一体何を読んでいるんだ?」
ニムロドはそう言い、白いホワイトテーブルの上で、黒いマグカップに注がれているウィンナーコーヒーとココアミルククッキーが置かれており、アスロックは本を読みながら読書に耽っていた。お互い第七波動(セブンス)能力者達を束ねるグリモワルドセブンの一人であり、無能力者を排除する為の決起の日まで、その日を待ち続けている。ニムロドは大雑把で、海を愛する青年だが、敵には冷酷な一面を見せる。対するアスロックは元々パティシエ志願の青年だったが、第七波動能力者差別で夢を挫折した故に、無能力者には容赦がない。
ニムロドがアスロックに目を付けたのは、『黒騎士と白薔薇の姫君』とタイトルが書かれている本だった。アスロックは「この本はテンジアンが貸してくれてね、君も本を読んだらどうだい」と言った。テンジアン。グリモワルドセブンのリーダーであり、それと同時に――。
(――パンテーラを守る騎士でありながら、兄…ね)
そう…義妹に愛情を注ぐ、氷のように鋭い目を持つ青年でもあった。彼なしでエデンが活動しているのは難しい。するとアスロックは「この本は」とニムロドに説明した。
「とある大陸は竜が人を支配しており、人が竜を聖なる剣で制した所から始まる。それから数百年、竜の親玉が復活して、大陸の大国たる王はある一人の勇敢たる騎士によって敗れ去った。その騎士は『黒騎士』と言われていて、騎士の国が誇る大陸一の騎士でもあった。身分も悪くは無かった――彼は国の王家の者達を処刑した――白薔薇と言われる姫君だけを残して」
「ほう」ニムロドがそう言うと、アスロックは話を続ける。
「黒騎士は聖なる槍を手にしており、一騎当千の無双を続けた――最強の騎士でもあった。しかし、その実態は悪を演じ切り、白薔薇の姫君を国の王家の者達を殺してまで、彼女を守り続ける故の、最初で最後の愛だった。彼は後に英雄王と言われる男に敗れ、死んだ」

『さようならニーナ――どうか、幸せになってほしい』

「大陸に、こんな言い伝えがある。大陸が平和になる時に、必ず愛する者を失ってしまう悲劇の代償――『アルテミスの定め』がある。彼は、その犠牲だ」
アスロックがため息をつくと、ニムロドは「悲しい話だねえ」と言った。確かに、悲しい話だ。でも――現実も変わりはない。世界の平和の為だと皇神はほざくが、実際は第七波動能力者を犠牲にしているのと変わりはないのだ。
「で、その本――続きはあるのか?」
「勿論、続きはある。竜の親玉が倒された後、白薔薇の姫君は皇帝となった男と婚約をし、世界は平和になったと言われた。が、その姫君は死んだ黒騎士に思いを寄せ続けていた。そのせいで皇帝は彼女に愛されないと苦悩し――闇の魔導士によって心を操られ…再び大陸は戦争となった。今度は竜と人の生存競争ではない。人と人の争いだ。白薔薇の姫君は暗黒なる竜の生贄にされそうになった――その瞬間、彼女を救ったのは、仮面の騎士だった」
アスロックは、次に供述する。
「仮面の騎士は、黒騎士とそっくりだった。彼は、彼女に「悪い夢を見ていたのです」と言った。それは、彼女が彼を想い続けていた悪夢ゆえか――その想いが、悲劇の引き金を起こした故か」
アスロックはそう言い、本を閉ざした。
「悲しい話だと思っていたけど、まさか彼女の愛が、戦争を起こしてしまうとは…悲しい話どころか、悲劇だ…で、感想は」
すると、アスロックは答えた。

「仮面の騎士は、最後まで白薔薇の姫君の心を手に入れたのかい?」

(全く、とんでもない話だったな)
ニムロドは、再び思う。黒騎士と姫君の話は、まるで何処かの――兄妹を思い浮かべる。
「…なあ、人を愛する心が悲劇を生み出しちまうなんて…思ってもいないよま…あの兄妹は」

それは、あの冷たい目をした男と、彼を愛する少女のようで――。





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