if〜ひとり想う〜

*死後。

ユラリ ユルレリ
泡沫 想い 廻る
秤 伝う 水脈
その手が 拓く 未来は
光へ 手を伸ばす

深い、水の中に居た。ずっと、暴力を振るわれ、体を貪られ、怒りの中で生きてきた。けれども、目を開ければ――深い、深い水の中だった。このまま自分は、溺れ死んでしまうのだろうか。すると、水の中に――手が伸ばされていた。手が延ばされていたその先を、泳ぎ――手を掴んだ。まるで、引き上げられているように――段々体が軽くなっていく――。

目を再び開ければ、何処かの湖の底だった。手を伸ばした主は――深い茶色の髪をした、若い青年だった。
「…石動」
「お目覚めですか、准将」
准将。と言う彼は、石動・カミーチェだった。私を庇い、辛かったであろう、あの時の――死に逝く思いで、息も絶え絶えな声ではなく、普段通りの、何時も通りの彼だった。
「もう、良いんです」
彼は微笑みながら、私に問いかけた。
「辛かったでしょう――苦しかったでしょう…世界を呪いながらも、必死に頑張りました――でも、良いんです」
蠅の王でもなく、英雄アグニカ・カイエルの魂を手にした男でもなく、ファリド家の息子でもない――ただ、一人の人間として生きた証。
「私は、貴方と共に居ます。ずっと、一緒に居ます。私は――理想を夢見、貴方が作り出した世界を見たかった――でも、それでも、私は貴方の共にいます。永遠に――地獄に落ちようとも」
深い、深い水の中――ずっと一人だった自分に、手を伸ばした彼。
「貴方は――最後まで、親友に恵まれていましたね」
「親友…?」
ずっと、一緒に居たガエリオ。
お節介と言いながらも、自分に恋い焦がれていたカルタ。
未来の妻であった、アルミリア。
「私は、貴方が羨ましいです。結局は、何も持てなかった自分ですが――最後まで、貴方と共に居て、幸せでした。ずっと、傍に居る事が幸せだと、気付いたんです」
それを、貴方が分かっているでしょう?と石動は再び微笑んだ。

「――そうだな、ずっと…幸せだったのかも…しれないな」
再び、水の底へ。一人じゃない、けれども――もう直ぐ、来るかもしれない、親友だった男――、幼馴染だった、少女――再び、会う為に。
そんな自分に、石動は、再び、私に笑いかけた。
「お休みなさい、准将…いや、マクギリス――」

選びしは 正しき道 すべてが
嘆きも笑顔も 悔いも夢も きっと
行く末に 迷い疲れ 流離い
茨をその身に 刻むもまた きっと

歌詞:if〜ひとり想う〜/蓮花



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