黒猫の輪舞曲

*ジュリエッタの過去を捏造しています

「そう言えばお前、階級も家柄も持たないパイロットだったらしいな。何か事情があるのか?」
ヴィダールはそう言い、何時も通り改修中のモビルスーツのコックピットの中で調整を行っている。ジュリエッタは身軽さでコックピット付近に来て、「そんなに聞きたいんですか?」と言った。
「ああ、お前の事情もガランやラスタルに拾われて育てられた位しか覚えていない」
「そうですね…あの頃の私を見て、ラスタル様は私を「黒猫」と言いました」
「黒猫?」

紛争街を徘徊していた小さな子供は、パンを盗んだ。身寄りが無く、自分に覚えているのは母親の温もりだけ。小さな女の子だった頃のジュリエッタは、お金が無いから、パンや食料を盗んでいた。盗む事しか出来ない普通の少女に、何が出来ると言うのだろうか。そんな日々が、繰り返されていた。
そんな日々に、終止符が打たれたのは――ある夜の事だった。
廃墟で食べ物を齧っていたジュリエッタを発見したのは、髭が特徴的な男だった。
「お前、独りぼっちなのか?」
ジュリエッタは首を横に振る。だが、その男は彼女を見て――手を引っ張る。
「俺がお前を拾ってやろう。だから、そんな子猫のような目をするな。俺の名前はガラン・モッサ。お前の名前は?一応聞くが、分かるか?」
「…リエッタ?」
「…ん?」
「…ジュリエッタ・ジュリス」

それからだ。彼に文字書きや色々な事を教わったのは。モビルスーツの事、この世界の事、色々な事を教わった。
「知っているか?死んだら人は、星になるらしい――まあ、俺の故郷の言い伝えらしいのだがな」
「………死ぬ?お母さんも、星になっちゃったの?」
「お前の母親は星になってしまって、やがて天へと還るらしい。まあ、そんな風になるのは、自然の摂理。らしいだろうな」
「…お母さん……」
ジュリエッタはぐずる。ガランはそんなジュリエッタの頭を撫でる事しか出来なかった。

「…お前の拾って来た子は、まるで「黒猫」みたいだな」
ラスタルはそう言い、ガランの隣に居る少女を見つめた。
「ああ、そうだな…名前はジュリエッタと言う。丁度雇い先の紛争街はずれの廃墟でこいつを拾った。まあ、俺と同じ――家も無く、両親も居ない」
「そうか…ジュリエッタ」
「…っ」
「お前、俺の所に来るか?一緒に来い…俺が、色々な事を教えてやる」
ラスタルはそう言い、ジュリエッタを見た。

「…それが、私とラスタル様、髭のおじさまの出会いでした。あの時の事は、一生忘れません…」
「そうか…お前も、あいつと一緒で…」
「あいつ?あいつって誰ですか?」とジュリエッタはヴィダールに問い掛ける。
「いや、何でも無い」とヴィダールは答えた。

(本当…お前は黒猫みたいだな…でも、怯えた子猫じゃない。可憐で、気高い猫だな――)
ヴィダールは、口が裂けても言えなかった。が、それは――確かな、彼への…。



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