*ジュリエッタの過去をやや捏造しています
私は身寄りの無い戦争孤児で、荒れた生活を送っていた。そんな私を拾ってくれたのは、髭のおじ様ことガラン・モッサであり、彼は私を拾って――ラスタル様に預けたのだ。読み書きも、知識も、髭のおじ様が全部教えてくれたのだ。でも、彼はあの鉄華団に殺されてしまった。ラスタル様はそんな彼はもう死んだのだ。と言って、私を励ましてくれたのだ。だから、彼の死を絶対に無駄にはさせない。無駄にはしない。と心に誓って、私は一生懸命トレーニングに励んだ。すると、そこに彼が居たのだ――ヴィダール。ラスタル様の側近であり、仮面を被った不気味な男。でも、彼はそんなトレーニングをしている私に、昔話をしてくれたのだ。
「君のような人間を知っている――尊敬する上官に拾ってもらえた恩を忘れずに、上官の存在を誇りとして戦い抜いた」
「その方は、いまどちらへ?」
その答えが、意外だった。そばにいる。と言う事らしい。恐らく、私から見れば、彼は亡霊にでも取り付かれているのだろうかと言わんばかりの深い声だった。咄嗟の私も、気づいたのだ。彼は、もう…死んでいるのかもしれないと。だから、それ以上は答える事は出来なかった。だから、答えるのも、問いかけるのも止めた。彼――ヴィダールは、哀れな亡霊に取りつかれた、男なのかもしれないのだと。だから、私は問い掛けるのを止めた。
ヴィダールは、自身の機体を見ていた。誇り高きスレイプニルを駆けるオーディーンの息子であり、鋼鉄の具足を着こなす神であり、新しき世界の住人。フェンリルを討ち取ったとされる神の名を模した機体であり、××××は此処に居ない。そこにいるのは、正しき世界に生きる者ののみ。
アイン・ダルトンは誇り高き人間だった。上官の恩を忘れずに、必死に戦い抜いた。だから、彼はそばにいると思っている。死んでも尚、戦い抜く――それは、まるで、エインヘリアルのように、ヴァルキュリアに選抜された死者の魂。だから、此処に居る。此処に居るんだと叫ぶ。
俺は、贖いきれないほどの罪がある。だから、罪をあがなえなくてもこの身が亡びるまで、必死に戦い抜いたお前の魂とともに、戦おう。
ヴィダール。そう、彼の名前は――。