Athazagoraphobia

*石動の過去に関する捏造あり

医務室にて。

「――それは、阿頼耶識システムの跡か?」
マクギリスに問われ、石動はふと服を脱ぐ動きを止めた。今日のテロリスト狩りでシュヴァルベを駆る石動が自分の不注意でかすり傷を負ったのだ。だから、医務室で傷を包帯で巻くつもりだ。ふと、マクギリスが動きを止めた。
「阿頼耶識システムは火星の少年兵に手ごろに施術されると聞いている。お前は――元少年兵か?」
石動は問う事も答える事も無く、「ええ」と答えた。
阿頼耶識システムの施術は、相当の苦痛が必要となると聞いている。この堅物の部下でも、死線を潜り抜けてきたと言うのだろうか。背中の阿頼耶識システム跡を見て、マクギリスは背中をなぞった。
(――かつて、ガエリオの部下にそれを施術したが――火星生まれと言う事は、相当な修羅場と死線を潜り抜けて来たと言う訳か)
「貴方は阿頼耶識システムを嫌悪しないのですか?」
「いや、嘗て友だった彼が部下に施術したのを見て、慣れているさ」
石動は「そうですか」と言い、マクギリスは彼の背中に包帯を巻いた。
「そう言えば、自分の経歴をご存知ですか?」
「…そうだったな、一度は見通せば良かったと思った」
「火星生まれで――元少年兵でした」
感情を無にする事で、死や、痛みに慣れる。感情を無にした自分の部下は、相当の修羅場を潜り抜けて来たのだろう。少年兵だったあの少年――三日月・オーガスも、阿頼耶識システムを使った事で、あの悪魔と呼ばれたグレイズ・アインを屠り、未だ現在でも悪魔の如き活躍をしていると聞いている。
「貴方は阿頼耶識システムをご存知だとおっしゃったのですが、何故嘗ての友のその危険な決断を――止めなかったのですか?」
「そうだな――」

『アインを化け物にする気か!?』

「異物を入れることに嫌悪した友人が下した苦渋と罪深き決断だ。止めることは出来なかったさ。それにその結果がエドモントンの悪魔だ」
石動は「そうですか」と言い、再び黙っていた。マクギリスは包帯を巻き、「此れで良いだろう」と言った。
「感謝します」と石動は言うが、マクギリスは「感謝などしていない」と言った。
「それでは、私は本来の仕事に戻ります」
石動は医務室を出て、そこにはマクギリスだけが残されていた。

「阿頼耶識システム、か…用意したのは、私なのにな」
マクギリスはそう言い、苦笑した。マクギリスは再び立ち上がり、本来の執務室へと戻った。



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