白雪姫の御茶会

アスロックが用意して作ってくれたマカロン。テンジアンが予め用意してくれた紅茶。それをテーブルに置いたパンテーラは、紅茶が入ったティファニーのカップを口にする。エデンの巫女である彼女は、大事な存在であり、あまり危険な戦場に出したくない。それを理由に口にするテンジアンは、パンテーラに招かれて庭に来ていた。モルフォ蝶がひらひらと飛んで、パンテーラは「きれい」と口にした。無能力者を排除し、新しい国家を作り出す――それは、過去の残響とも言えよう。ふと、テンジアンは読みかけの小説本を持ち、パンテーラがいるテーブルの隣に置かれた椅子に座る。パンテーラはふと、テンジアンの表情が険しくなっている事に気付く。彼女はテンジアンに話しかける。
「どうしたんですか?」
「パンテーラか。青息吐息、僕はただ――ちょっと君が食べ物を食べている事にちょっと不安があってね」
「不安ですか?貴方は――過去を思い出しているんですか?」
「知己朋友――君は、本当に僕の気持ちを分かってくれる。ああ、そうだとも――毒の食べ物を、思い出して」
彼が話したのは、幼い頃、化け物だと恐れられ、親に捨てられた事。優しい人が食べ物をくれた事――それを無残な形で裏切られ、無能力者に、能力者は統治されるべき存在だと思い知らされたこと。パンテーラと出会い――共に理想を共有しようと願った事。
「僕は、君と出会って少しは変われたよ――無論、他の彼等も虐げられ、嘆き悲しんだ。あの頃の僕は、池魚篭鳥――能力者だから、差別されて来た――僕は、そんな困った能力者を救いたいだけなんだ」
「ふふっ…まるで、何処かの誰かさんと大違いですね。アスロック――彼も、無能力者に深い差別を受け、復讐に取りつかれても尚、能力者を救いたいという思いがあるから、グリモワルドセブンに入ったからなんですよね…でも、私は、理想があるから、理想郷があると思うんです。貴方は、過去を大事にして下さい」
「大願成就――僕は、君の理想を叶える為に此処に居る。理想郷を、設立する為に」
パンテーラはテンジアンの言葉に共感した。だから、ここにいる。未だに、無能力者に虐げられ、嘆き悲しんでいる人々(能力者)を救う為に。
「私は、あなたに死んで欲しくないと思っているんです。テンジアンも、ジブリールも、ニムロドも――エデンのみんな、みんなが死んで欲しくない」
それは、願いでもあった。その願いを叶えるために、もし、願いが叶ったら――もう一度、お茶会をしよう。テンジアンだけでなく、ニケーやガウリ、ニムロドを招いて。ふと、そんな思いに耽ると、彼はマカロンの一つを食べた。
「美酒佳肴――おいしいな、これは」
テンジアンは、あのころ無能力者に食べ物を分け与えられ――世界が反転した日を思い出す。が、能力者のアスロックが作ったマカロンは、特別おいしい味だった。

お茶会は、まだまだ続く。



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