ただ、角付きを討てば其れで良い。
優しかったあの人を無残に殺した宇宙ネズミが憎い。
殺し殺される世界を売れいていたあの人が憎い。
でも、憎いのは、俺?それとも――彼?
「アイン?」
ガエリオはアインに声を掛ける。声を掛けても、彼はモビルスーツと一体化しているのだ。
「ガエリオ特務三佐?」
困惑した表情を浮かべたアインだったが、ガエリオはうつむいた表情を浮かべていた。
「お前は――それで、良かったのか?」
「ええ、それで、良かったんです。俺は、ただ、クランク二尉の敵を討てば其れで良い」
それで、よかったんだな。とガエリオは言う。そうかもしれない、自分は間違っているのかもしれない。けれども、俺は彼が憎かった。優しかったあの人を、世界を売れいていたあの人を、無残にも残酷な方法で殺したあの人が憎い――憎い、憎い、憎い。
「ああ、それで――良かったんだな」
「ええ、それでよかった。貴方が無事で、良かった。体が壊死しようとも、この体が欠けても、必ずや、奴らを撃ち果たし、クランク二尉の無念を晴らします」
この体は水の中。水の中にいる。けれども、水の中で浮かんでいる自分の姿は残酷か、それとも――悲劇?
「お前は、地球の水や風景を一切見る事が出来ないまま、朽ち果てて行くんだぞ」
ガエリオ特務三佐、有難う御座います。自分は、それで良いんです。
例え、体が貫かれようとも、体がバラバラになろうとも、必ずや、鉄華団を打ち負かして見せます。そして、必ず、彼の無念を――。