karma

*IFの話。

――トライロバイト格納庫。

「母さん?」
銀色の髪をした青年は困惑そうに表情を浮かべた。格納庫に立っていたのは、マントを翻した蒼い機体――『ヴァイサーガ』。元々はソウルゲインと同じく格闘用に開発された機体だが、シャドウミラー戦闘部隊隊長アクセル・アルマー専用に開発されていたソウルゲイン、W17『ラミア・ラヴレス』専用に開発されたアンジュルグ、そして――まだ、乗り手が居ないヴァイサーガ。
Wを統べるW00こと『ハーケン・ブロウニング』は、困惑そうに母の名を呼んでいた。望まれて生まれてきた彼は、生まれてすぐ成長剤を入れられ、まだ青年の姿なのに、精神はやや幼い。けれども、彼にとっては母は、母だ。
「…ハーケン?」
「ああ、母さん…此処にいたんだね」
ハーケン。と呼んだ名前がやけに悲しくて。と彼は思った。彼女の名前はレモン・ブロウニング。Wシリーズの生みの親にして、シャドウミラー首領ヴィンデル・マウザーの片腕。と呼ばれている――ヴィンデルはWシリーズを人形としか思っていないであろう。故に、性格ゆえに。
「何を見ていたの?」
「えーと…乗り手が居ない、ヴァイサーガを」
ヴァイサーガは、まだ乗り手が居ない。ハーケン専用のゲシュペンストも開発が遅れている――ふと、レモンが少し、ほほ笑んだ気がする。
「…乗りたいの?」
「…うん、何だか、寂しい気がするんだ」
「寂しい?」
「こんな事を言うのもあれなんだけど――W17、ラミアは…アンジュルグに乗ってるし、隊長も――ソウルゲインに乗ると言っているから、この機体――なんだか寂しそうな気が」
「…じゃあ、貴方が乗ってみたら?」
「そ、そんな!恐れ入ります!自分みたいなまだ、未熟なパイロットが…」
「使いこなして見せなさい…そうしたら、アクセルも、貴方を評価してくれるわ。貴方には、ほかのWシリーズとは違う、自我がある…貴方は、人形だけども、自我があるの。自分で何をしたいか――自分で、何をするのか…考えて見せなさい」
レモンはそう言い、スッとハーケンの隣を横切って隣の部屋へと消えた。ふと、ハーケンは機体を見上げていた。自分が何をしたいのか。そして、何をすればいいのか――ふと、ヴァイサーガに、手を挙げる。
「…これからも、宜しく。ヴァイサーガ」


――ふと、夢を見ていた気がする。今、いるのは異世界だ…あったかもしれない、母親の記憶。ぬくもりを知らないが――アシェンが「大丈夫でござんすか」と言った。今、ハンガーにいる。そして、其処に居るのは――。

「ま、これからも宜しくな。Mr.ソードマン」

再び、時は巡る。



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