ガランドウ

ある日、飛び降り自殺が発生した。
ビルの屋上には置き手紙で「さようなら」と書かれており、警察は自殺と判断した。きっと、自殺者は最後まで空を飛べたのだと判断したのだろう。羨ましい。と僕がいうと、イオタさんは「飛び降り自殺は誇り無きものが行う嘆かわしい行為です」と言った。

空を飛ぶ錯覚は誰が決まるのだろう。ただ、空を飛んで散華する錯覚はただただ虚しいだけなのに。と口ずさむとイオタさんがはぁ。とため息をつく。
ただただ空を飛ぶ錯覚が拭えないのなら、いっその事飛んでしまえばいいのだろう。でも、僕には空を飛ぶ感覚などとうに忘れている筈。飛んだ事すら分からない。分からん無いのはいつ?分からないのはどっち?

ある夜、イオタさんと一緒に飛び降り自殺が発生したビルの所まで行った。屋上には吹き荒れる風が吹きすさぶだけ。何も無い場所だと思った。きっと、自殺志願者は空を飛んでいる錯覚を見ていたのだろう。空を飛ぶには、何も条件が無いのだ。ただ、虚しかった。
「そういえば、聞きましたか?」
「ん?何だい?」
「彼は、元々第七波動能力者でした。飛翔(フライ・フェザー)と言う能力者であって、空を飛ぶ錯覚を拭えなかった。拭えなかったからこそ、空を飛ぶ錯覚が拭えずに居たのでしょう。その違和感を、飛び降り自殺として処理をすれば、いっその事、飛び降り自殺で――」
「いや、イオタさん、いい」
「何故ですか?彼は飛び降り自殺をして…」
「今は、そっとしておいてくれ。彼は、やっと天国へ空へと飛べるはずなんだと思う」
「そうなのですか」
「うん、空を飛んで散る事は、悲劇じゃない。散華も、自殺も、殺人も、殺される運命も――ただただ、悲劇じゃなく、当たり前すぎた。当たり前すぎたんだ」
「…紫電殿」
当たり前すぎた自殺。その当り前さは、当たり前としか処理出来ないだろう。


――ある時、また飛び降り自殺があった。
娘と妻を殺した犯人を、抱えて自殺したらしい。脳髄ぶちまけて、その男は何を思っただろう。
「紫電殿」
「ああ――――今度は、『散華』?」

答えは、まだない。



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