崩れ果てた慚愧

※ロイエス騎士視点。

一度だけ、彼の本当の素性を知った事がある。

彼については最低限の事しかしない。あの日鉄の古王――彼等に何があったのか、本当の事を話さない。あまり他人は関わりを持ちたくはない。白王に対しては何かしらの依存か、執着のように…人が変わったような性格に変わる。ロイエスに仕える騎士の自分から見た彼は「最低限の事しか興味が無い人」だと思っていた。自分達が仕える王に対しては、大丈夫か。何か怪我はないか。と先を案じているような態度をしていたが、別の何かを感じ取っていた――それは、自分に任せて欲しい。と言うような依存のような優しさと、彼等に手を出す者は一切塵も残らず屠る、狂気。あんなのと関わっている王も少しは、他者との付き合いを考えて欲しいと内心思っているのだが。

ただ、猛吹雪が吹き荒れる聖堂街に警備をしに行く。と同僚に告げた後、目的の場所に着いた時の事だった。
(あれは…)
当の本人――風変わりな鎧を着ている騎士だ。エス・ロイエスの住人や騎士とは違う、その東国の人物であることは嫌でも目に付く。しかし、自分が目に見ている景色は其れだけではなかった。王の仔であるアーヴァが…王であるあの方にしか懐かない獣が――撫でている優しい手つきを気に入っているのか、彼に懐いていたのだ。
(…嘘だろう?)
嘘だろう。それはそうだ。アーヴァは獰猛な獣だ。自分や王の敵である異形や外の敵は容赦なく牙で喰らう存在だ。あの彼女が彼に懐くなど。と思った矢先に、
「…あの件はすまなかったな」
あの件は、何を?ただ、彼は彼女に謝る様な形で問い掛けた。
「彼女に癒えない傷を負わせたのは自分だ。ただ、異形を闇雲に討伐するだけでは何も解決にならない――だから、逃げるべきだ。と自分はらしくない事を言ったのだが。それでは彼と同じ二の舞になるだけだと」
逃げるべき――異形を討伐するべきでは解決にならない――彼は、何を知っているのだろうか。仕える筈だった鉄の古王を見捨てる形のような言い方だ。何があったのかは分からない。ただ――後悔しているような言い方だった。
「…けれど、裏切りは、やはり性に合わない。裏切りは許されないと、自分は思っている。そう思うのは、自分だけで良い――」
そうして、彼はアーヴァを撫でていた手を放し、その場から立ち去る様にこの場所から逃げ去った。

彼の本当の素顔は、あの時、自分が彼に声をかけていれば――もっと知れた筈だろうに、手を差し伸べたら何かが壊れてしまいそうで、やめてしまったのだ。
じゃあ彼は、陛下や自分にも知らない、暗い秘密を打ち明ける事が出来ないのか?
今となっては、知る事もできなかった。

title:fall asleep.



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