今日は特別な日

*遊戯王パラレル設定あり

ダブルベッドですうすうと居眠りをしている刑事に対し、見習い刑事である少女はムスッとしていた。
(明日はせっかくの買い物なのに…)
彼女――アイン・ダルトンがムスッとするのも無理はない。電脳世界で大きな事故が起き、明日は大掛かりな調査になるというのだ。Tシャツ一枚パンツ一枚の格好をしている彼女は、ハァ…と大きなため息をつく。イヤホンで携帯型デバイス『ラジエル』で、音楽を聴いていた。が、音楽を聴くのもままならない。彼女は音楽を聴くのをやめた。でも、彼女にとってはこの大男――クランク・ゼントと一緒に居るのが幸せだったのだ。

「あ、おはよう…」
二階の寝室から一階に降りた後、クランクが珍しく料理をしていた。アインは「どうしたんですか?」と困惑しそうにしている。
「今日はベーコンエッグとフレンチトースト…お前、好きだろう」
「好き…はい、私、この料理が好きなんです。勿論…ええと、クランクさんの作る料理はもっと好きです」
クランクは「そうか」と言い、フライパンでベーコンと卵焼きを焼いていた。そうして焼きあがったベーコンエッグを皿に乗せ、フレンチトーストにトマトを一個乗せる。アインは椅子に座り、頂きます。と手を合わせた。フレンチトーストを食べているさなか、クランクは話をした。
「アイン、今日は何の日か分かるか」
「ええ、そうでしたね…今日は…ええと、私の誕生日でしたっけ」
クランクは「そうか」と言い、アインは困惑して首を傾げた。
「何か、ありましたっけ…?」
「そうか、お前は誕生日を祝う事を知らないんだな」
「ええ、祝われるなんて、今までやった事がありませんから…」
アインは、顔を赤くした。Tシャツから見える胸を腕で掻き毟る、が、彼女はそのまま顔を赤くしたままだ。
「何と言えばいいのか…自分は、誕生日を祝っても良いのでしょうか」
「ああ、良いとも。今日は特別だぞ――調査が終わったら、一緒に食べに行こう」
「はい…自分は、幸せです」
いつの間にか、フレンチトーストとベーコンエッグを食べ終わり、アインは皿を片付けた。クランクもアインと一緒に食器を片付ける事に決めたのだった。

(何だろう…自分は、幸せ者だ。祝われても、良いのだろうか)

アインは治安が悪い地域に生まれた。母親と父親は生まれた国は違うものの、混血児である彼女は、生きるのに精いっぱいだった。研究所に引き取られ、そこで出会ったのは、クランクだった。今まで祝った事は無いものの、彼女にとっては、特別な日になりそうだ。
――私は、幸せ者ですね。
彼女はそう言い、フフッと笑った。



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