「スターセイバー、気を付けろ…そこはぬかるみになっていて滑ったら転ぶ…あーあ」
デスザラスが警告しようとしたつかの間、スターセイバーは早大にすっ転んで服が水浸しの上に泥だらけになった。真面目にこいつが自信があるのは長所だと解るのだが、その隙を突かれたらどうにもならない…と言うのが彼の短所である。早大にすっ転んだのも、自分と彼が共に行動しよう。と荒らしの夜明けであろう、この無人の惑星で調査をしたその矢先の出来事であった。しかし、まさか早大にすっ転ぶとは。こいつにもドジなところがあるんだな。と思ったデスザラスであったが、こんなことを言うと真面目に彼に殺されかねないと思い、口を黙らせた。だが、つい泥だらけになったスターセイバーを見て、早大に大爆笑をしてしまい…自分も大爆笑に対してブチ切れたスターセイバーの鉄拳を喰らってぬかるみに倒れこんだので、二人共ども服を乾かすことにした。
「さっきは悪かった。反省はしている。後悔はしていない」
「煩い、さっさとタオルを手にしろ」
スターセイバーに怒られながらも、デスザラスはタオルを手に取り、身体を拭く。スターセイバーの身体を凝視をしていたが、綺麗なお人形のような面をしている――訳ではなくて、体の傷が彼方此方にある。切り傷は分かるが―――打撲跡?とデスザラスはその痕に気付いた。打撲跡…と言うより、痣のような…鬱血とした跡だ。デスザラスはスターセイバーの手を取る。
「お前…この傷跡はどうした?」
打撲跡…まるで、一方的に殴られたような跡だ。スターセイバーは其れを見たくはなかったのか、睨むような表情をされた。スターセイバーは仕方なく、自分に説明をする。
「…私がダイアトラスと出会う前は色々あったと説明しただろう」
「ああ、そうだが…それが、どうかしたんだ?」
「………色々、の部分だ」
自分は戦争の怪物である。だからセイバートロンの黄金時代などあまり分からない。ただ、黄金時代の裏には悲惨な事件と、屍の上で積み上げられた平和があっただろう。と知っている。スターセイバーはその被害者と言うべき存在だろうか。例えるなら、無垢な存在を甚振る変わり者の権力者――いや、辞めておこう。欺瞞だ何だの、言える理由も無いのだから。
スターセイバーはデスザラスの身体を撫でる。自分と同じ傷だらけの身体をしている。当たり前だろう、自分は戦争で生み出された存在なのだから。これくらいは当たり前の事だ。とデスザラスは頭の中で考えていた。その代わり、スターセイバーの白い髪を素手で触る。
「水浸しの手でべたべた触るんじゃない」「それくらいこれは許されてもいいだろう」「……はあ、仕方無いな」
小言を言うスターセイバーに、デスザラスは苦笑をした。早めに服が乾いたら、酒のつまみ話にスターセイバーが転んだことについて話して、レオザックを驚かせてやろう。