月蝕

この世界に神が居るのだとしたら、自分はそれを否定するだろう。神も糞も無い、ただの同胞が殺し合う世界に神々は我々を見放したに過ぎない。そして、戦争や殺し合いを起こすのは、何時だって自分たちなのだ。そう、いつだってその世界に神は居ないのだから。

咲き乱れるは赤い曼殊沙華。それは自分が殺した彼の血だ。自分と彼の殺し合い、決着がついたのは自分。勝ったのだ――負けたのは、彼だ。此処にはあの処刑人も騎士の長も居ない。存分に殺し合える。ただそれだけの事だ。白い、穢れない雪のような髪に赤い血が染まっている。自分が持っていた剣は、ただ彼の胸元を貫いていた。優しい表情で、眠る様に息絶えている。ただ、自分が勝ち、死んだのは彼だ。けれど、彼のあの月のような狂い瞳はもう見れないのだとすれば、残念だ。ただ、彼を殺したのは他でも無い。存在理由だ。そして、彼も自分を殺したい。そうすればこの満たされぬ思いを満たす事が出来ると思っていた。けれど、それは自分が結果的に彼の願いを果たした。ただ、デスザラスにとってはスターセイバーと共に歩める事が出来たのなら、それでよかった。けれど、出来なかった。何故なら、これは自分自身と彼が望んだことだった。スターセイバーは、最後までダイアトラスを選んだ。神に殉じるつもりだったであろう。けれど、其の手を取って、虐殺の道を歩めば、それが出来たのならば――自分は彼と共に歩めば、それでよかったのに!だが、止まった時間は動かぬまま。結末は変えられない。

お前は最後まで騎士だったよ。それで尚、神を信仰し、ダイアトラスを信仰している事が愛だった。
けれど、俺はお前と共にある。だから、約束しよう。俺は貴様以外に契りを結ぶことは決してしないと。ああ、約束だ。だから、俺はお前の亡骸を抱いて祈りを捧げよう。お前を、愛していると。赤く、狂うように照らされている月のように、お前は眠る。もう二度と離さない。

ただ、彼等を月蝕が照らす――そして、デスザラスもまた、スターセイバーを愛していた。そう、それが彼らが生きている意味であり、最初で最後の契りを果たすために。



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